カーボンナノコイル(CNC)は、ファイバ直径が200 nm程度、コイル直径が数百nm~1 μmのソレノイドコイル形状の炭素ナノ材料である。CNCは電磁波吸収特性に優れることが示されているが、ナノメートルサイズのコイルとしてナノインダクタに応用するという研究はその微小さ故にあまり進んでいない。本研究ではCNCによる電磁誘導現象の観測というこれまでに例のない研究に挑戦する。最終年度である平成26年度は、集束イオンビーム装置を用いて電極間に配置して測定した単一のCNCの直流電気特性を他の炭素ナノ材料と比較すること、さらにコイル直径と抵抗率との関係について検討する、という年度当初の研究計画に対して下記の研究成果を得た。この成果は、CNCの電磁誘導現象の観察にとって重要な知見である。 (1)基板上に形成した2箇所の金薄膜上にCNCのそれぞれの端を載せて、白金でその端を固定することにより測定試料を作製した。10個以上の試料を作製し、それぞれの抵抗値を測定した。また、黒鉛化処理したCNC(GCNC)と直線状のカーボンナノファイバ(CNF)の抵抗値を同様に測定した。 (2)測定したCNCのそれぞれの抵抗率を比較した。CNCの抵抗率は高いグループと低いグループとに二分され、コイル直径が大きいと抵抗率が高くなるという傾向を得た。また、CNFの電気抵抗率はCNCの2グループの値の中間に位置すること、GCNCの電気抵抗率はコイル直径に依存せず、その値は最も抵抗率の低いCNCと同程度であることがわかった。透過型電子顕微鏡による観察および可変領域ホッピング(VRH)モデルを用いた検討により、CNCを構成するアモルファス炭素の構造が電気伝導性に関連する可能性を理解した。
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