運用開始後数年以内で特性が劣化したり故障する太陽電池モジュールの存在が報告されている。太陽光発電の出力は気象条件によって大きく変化するため,太陽光発電システムの出力のみからモジュールの劣化や故障を検出することは容易ではない。そこで,屋外に設置されて稼働中のモジュールに外部から刺激を与えて,その場(in situ)で劣化・故障の検出が可能な能動的な診断方法が必要である。また同時に,モジュール内の多数のセルの中から異常なセルを同定し,その故障モードを明確にする必要がある。本研究では,太陽電池モジュール表面に50kHzの方形波電圧を印加した誘導コイルを置き,セル内部に誘導起電力を発生させ,モジュール出力端子での応答波形を測定した。クラックやフィンガー断線などの破損セルのある故障モジュールを用いて,エレクトロルミネッセンス(EL)測定と本手法による測定を比較した結果,EL強度の弱い故障セルにコイルを設置した場合,モジュール出力の応答波形に明らかな違いが確認できた。また,故障セルの励振位置を変えることによって,セル内でのEL強度と相関した信号が得られた。これにより,発電中の太陽電池モジュールについてEL測定と同様な診断が可能である。また,発電状態での太陽電池モジュール内のセル毎の診断法として,セル表面の磁束密度分布測定法を開発し,磁束密度分布変化からクラックやバスバー断線などセル内の電流密度分布異常を検出可能なことを示した。
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