研究課題/領域番号 |
25630115
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
若尾 真治 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (70257210)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 太陽光発電 / 日射予測 / 蓄エネルギー / 多目的最適化 |
研究概要 |
本研究では、環境エネルギー問題を背景に今後予想される太陽光発電の配電ネットワークへの大量連系を見据え、太陽光発電電力の効率的な利用を実現する蓄電デバイスへの蓄エネルギー運用技術の確立を目指し、日射予測・最適充放電制御の探索手法・最終的なエネルギーマネジメントの指針決定支援までを一体化した統合型シミュレータの構築を目的としている。 初年度である本年度は、シミュレータの構成要素の一つである「Just-In-Time(JIT)Modelingに基づく翌日日射予測技術の開発」に取り組んだ。JIT Modelingは、まず対象システムから得られた過去の入出力関係をデータベースとして用意し、次に予測対象としている入力ベクトルとデータベース中の入力ベクトルデータ群を比較して類似データを選択し、その類似データを基にシステムの出力を推定する手法である。物理的な定式化を必要としないことから、気象現象のような複雑な対象に対して、簡便で高精度なモデル化が期待できる。翌日日射量の推定精度向上のため出力と相関を有する適切な入力群を随時選択する必要があり、開発手法では気象庁が配信するGPV (Grid Point Value) データ等、入力データとして適性の高いものを精査・選択し、データ選択時の距離測度の最適化を行うなどの工夫を施した。その結果、蓄電装置を併設した太陽光発電システムの運用制御に十分活かせる予測精度を達成できる見通しが立った。また、広域に太陽光発電が大量導入された場合を想定し、エリア全体における総日射量予測にも開発手法を適用し、単地点予測と比較して予測精度における均し効果の影響等も定量的に明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度取り組んだ「Just-In-Time(JIT)Modelingに基づく翌日日射予測技術の開発」においては、気象庁が日本各地の44地点で行っている地上観測データや過去に実施されたフィールドテストの実測データなど、高精度な日射計測データを用いて精度検証を行い、次年度実施予定の「日射予測情報に基づく蓄電デバイスへの充放電制御の高度化」に十分貢献可能な予測精度を実現していることが確認できた。このように、当初の予定通り、順調に研究を進めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
太陽光発電システムを安定・効率的に利用するためには、既存の電力系統と連系させて太陽光発電の出力不安定性を補償する必要がある。2年目となる次年度では、太陽光発電出力安定化策の一つとして太陽光発電システムに蓄電装置を併設し余剰電力を吸収させ、電力系統への逆潮流量を適切に調整する手法の開発に取り組む。特に、本年度開発した翌日日射予測技術に基づき太陽光発電の余剰電力を予測し、多目的な条件下での蓄電デバイスへの最適な充放電制御への予測情報の導入方法や導入効果についての定量的かつ詳細な検討を行う。具体的には、数百軒規模の太陽光発電住宅群を有する配電ネットワークモデルを例題として利用し、簡便かつ実効性のある予測情報の活用方法を確立する。その際、目的関数としては、環境性や経済性など、トレードオフ関係にも留意したうえでインフラとして求められる複数の目的を選定する。本研究期間において最終的には、得られたパレート最適解の比較や分析によって提案運用法の効果やその要因を検討し、提案運用法の有効性を実証するとともに、開発手法を融合させ、日射予測からネットワークにおける蓄電デバイスのエネルギーマネジメントの指針決定支援までの一貫したプロセスを全てカバーする高速・高精度な統合型シミュレータを構築する。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度において開発に取り組んだJust-In-Time(JIT)Modelingに基づく翌日日射予測技術は、過去の履歴データに基づいた簡便かつ精度も良好なブラックボックスモデリングであったこともあり、次年度に予定している蓄電デバイスの充放電制御の多目的最適化と比較し、相対的に計算負荷が軽いことがアルゴリズムを開発・実装していく過程で明確になった。このような状況から判断し、より効率的な研究費の活用を考慮し、次年度に計算機環境の整備等を重点的に行う方針をとることとした。 平成26年度に予定の「日射予測情報に基づく蓄電デバイスへの最適な充放電制御の探索手法の開発」では、蓄電デバイスの充放電制御の多目的最適化を実施する。この際、電力インフラの視点から多数の目的関数が生じることと、エネルギー需要における電化が今後進み電気自動車(EV)をはじめとする新たな制御要素(設計変数)が多数創出されることから、極めて計算負荷の大きい最適化計算を実施する必要が出てくると考えられる。そのため、研究効率を考慮し、最適化計算を中心に取り組む平成26年度において、計算機環境の整備等に研究費を使用する予定である。
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