本研究では、環境エネルギー問題を背景に今後予想される太陽光発電の配電ネットワークへの大量連系を見据え、太陽光発電電力の効率的な利用を実現する蓄電デバイスへの蓄エネルギー運用技術の確立を目指し、日射予測・最適充放電制御・最終的なエネルギーマネジメントの指針決定支援までを一体化した統合型シミュレータの構築を目的としている。 昨年度までに、「Just-In-Time Modelingに基づく翌日日射予測技術(予測信頼区間の推定まで含む)」が確立したことを受け、本年度は「翌日の日射予測情報に基づく蓄電デバイス充放電制御の多目的最適化技術」および「得られたパレート最適解より、太陽光発電システムにおけるエネルギーマネジメント指針の最終的な決定を行う情報処理技術」の開発に取り組んだ。具体的には、簡便かつ実用的な手法として、発電量と負荷量の差異(予測値)を複数段階にレベル分けし、各レベルに応じて蓄電池運用パラメータを最適値に切り替える運用手法を開発した。さらに、散布図行列を用いることで、太陽光発電システムの運用目的に応じた運用パラメータの適切な設定指針を明らかにする分析手法も開発した。また、数値実験により、これら提案手法の有効性を明らかにした。 この他、翌日日射量の予測信頼区間の推定情報(信頼度、および信頼区間の上下限値)に基づき、太陽光発電システム内の蓄電池放電量を適切に決定する蓄エネルギー運用技術なども開発し、同様に数値実験によりその有効性を明らかにした。 以上、本研究期間における開発手法を融合させ、日射予測から太陽光発電システムにおける蓄電デバイスのエネルギーマネジメントの指針決定支援までの一貫したプロセスを全てカバーする高精度な統合型シミュレータを、予定通り構築することができた。
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