本研究は、「強磁性金属薄膜の誘電率が可視光から赤外光領域にわたって,キュリー温度 (Tc) 付近で変化する現象」を活用し,Au/強磁性層/Auマグネトプラズモニック構造体の局在表面プラズモン (LSPR) 共鳴のON/OFFをTcを利用して制御しようという挑戦的な試みである.所望のTcを有する強磁性金属材料を上記マグネトプラズモニック構造体に用いることにより,Tcを境としてLSPRの励起/抑制を制御することが狙いである.Tcに傾斜を付けておくことにより,簡単な温度センサとなることは元より,屋外で太陽光を利用することにより,温度自己制御型素子 (LSPR損失にて自己発熱,昇温にてTcを超えると共鳴は自己停止) への展開を目指す. 平成26年度は,初年度に得た強磁性薄膜のTc近傍での誘電率スペクトルの温度変化特性を基に強磁性材料と層構成を決定し,電子線リソグラフィとミリングによる微細加工技術を確立して,Au/強磁性層/Auマグネトプラズモニック構造体を単位構造とする配列組織を作製した.実際に温度変化させてLSPRスペクトルを評価した.微細加工条件については,40nm厚さの多層膜試料をドット径として50nm,周期150nmの配列組織を実現した.この試料のLSPR吸収波長を評価したところ,キュリー温度付近で温度変化率が変化することが明らかとなった. また並行して,微細加工を必要とせずにスピンの配列で誘電率を変化させる手段として,スピンの平行/反平行配列を実現するために,RKKY的相互作用を発現させて磁化の反平行配列を安定化させたCo/Ru/Co多層膜を作製し,マグネトリフラクティブ効果を評価し,プラズモニック構造体への展開に向けた基礎検討を行った.波長1550nmで平行/反平行のスピン配列変化に対応して1%程度の透過率変化が現れることを明らかとした.
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