気相堆積ポリイミドの三層積層膜を形成することに成功した。連続して厚さ約2μmのポリイミド構造を堆積し、その高い被覆率(80%以上)と耐圧(絶縁破壊電圧は約400V/um)を確認した。Cuを埋め込んだ後のポリイミドライナー絶縁膜付Cu-TSVでは、TSV間のSiにかかる応力が、SiO2ライナー絶縁膜付Cu-TSVに比べて劇的に低いことが判明した。この現象は非常に興味深く、この応力低減メカニズムを追究した。成膜温度はどちらも200℃であった。ウエハ上に成膜した際の内部応力は、気相堆積ポリイミドで約40MPa(引張応力)に対し、TEOSえお用いたプラズマCVDで堆積したSiO2は110MPa(圧縮応力)であった。気相堆積ポリイミドのCTEは25ppm/Kであり、プラズマCVDにより堆積したSiO2のCTEは2ppm/Kであった。一方、SiとCuのCTEは、それぞれ3ppm/K、17ppm/Kであるため、CTEでは説明ができなかった。ヤング率を比較すると、プラズマSiO2では50-60GPaであるのに対して、気相堆積ポリイミドでは3-4GPaと1/10以下の低弾性であり、この応力の違いはライナー絶縁膜のヤング率によって支配されていることが分かった。ビアラスト方式で気相堆積ポリイミドライナー絶縁膜を用いてTSVのデイジーチェンを形成した結果、直径20um、深さ40umのCu-TSV1本あたりの抵抗(Cu配線との接触抵抗含む)は18.2ミリオームであり、良好な電気的特性を示した。
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