大きな遷移双極子モーメントを持つ物質中の局所電子状態は光子と固体との量子インターフェースを構築する上で不可欠であり、これを利用した究極的な光子操作は、量子通信にかかわる未来型デバイスの基礎原理には欠かせない。従来から研究されている自己形成量子ドットとは異なり、半導体中不純物に束縛された励起子は究極の量子ドットであり、発光波長は不純物固有なので均一である。本研究ではわれわれが開発したGaAsへの窒素デルタドーピング技術を利用して2次元に配列した窒素束縛励起子を作製し、歪ポテンシャル制御を通じて均一発光波長で0.85μm光通信バンドで動作するオンデマンド量子もつれ光子対生成を実現を目指した。具体的には、AlAs/GaAs DBR構造によりQ値を制御したキャビティ構造を作製して強い光閉じ込めを実現し、均一な励起子数に依存した励起子-光結合速度の制御を通じてもつれ光子対放出の輻射性能を制御する技術を構築した。また、シミュレーションにより励起子-光結合速度の制御性を明らかにした。本研究の特徴は、電子状態が均一な窒素束縛励起子を利用することによって、これまでは不可能であった励起子の歪ポテンシャル制御によるもつれ状態を創り出すことを可能にするだけでなく、励起子とキャビティフォトンのスケーラブルな相互作用によって輻射性能も制御できる。
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