研究課題/領域番号 |
25630127
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
板垣 奈穂 九州大学, システム情報科学研究科(研究院, 准教授 (60579100)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | エキシトニックトランジスタ / ZnInON / ピエゾ電界 / 量子井戸 / 結晶成長 / スパッタリング |
研究概要 |
本研究は,世界初となるエキシトニックトランジスタの室温動作を目指し,独自に考案した「ピエゾ電界誘起構造」と新規半導体材料「ZnInON」を用いて,エキシトン流の高効率生成およびその制御を実現することを目的としている.H25年度の成果は以下の2点に集約される. 1. 新規半導体材料ZnInONの高品質結晶成長:エキシトン流生成のためにはZnInON 膜の高品質化が必須である.本年度は我々が独自に開発した「不純物添加結晶化法(IMC法)」を用い,世界初となる単結晶ZnInON膜の作製に成功した.IMC法では,膜形成時における不純物元素の混入が結晶成長を阻害することを利用することで,結晶成長モードを制御する.これにより,従来スパッタリング法では不可能であった格子不整合基板(Al2O3基板:格子不整合率18%)上への単結晶ZnO膜形成を実現し,このZnO膜をテンプレートに用いることで,ZION膜の単結晶化を実現した. 2. ピエゾ電界誘起量子井戸の作製:本提案のエキシトニックトランジスタ構造において,ピエゾ電界はZnInON量子井戸内に生じる結晶歪みにより発生させる.具体的には井戸層を障壁層に対してコヒーレント(格子緩和させず)に成長させることで,歪みを誘起する.本年度は上記IMC法を用いて膜中欠陥密度を低減することで,ZnInON歪量子井戸の作製に成功した.この時,プラズマ制御によるスパッタ粒子および酸素窒素ラジカルのフラックス制御を行うことで,ZnInON膜の残留キャリア濃度の低減を実現している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では室温動作可能なエキシトニックデバイスの実現を目的とし、1) 新規半導体材料ZnInONの高品質結晶成長 2) エキシトン流の高効率生成およびその制御,の2項目について研究を行っている.本年度は我々が独自に考案した「新規結晶化法(IMC法)による結晶成長モードの制御」と「プラズマ制御による欠陥密度低減」を行うことにより,項目1)の高品質結晶成長を実現している.項目2)については、項目1)で得られた高品質ZnInON膜を用いることでコヒーレント量子井戸構造の作製に成功し,本提案のピエゾ電界誘起量子井戸構造を実現している.H26年度は,上述の歪量子井戸におけるエキシトン流の観測およびスイッチング動作実証に注力し,早期のデバイス実現を目指す.
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今後の研究の推進方策 |
H26年度は,ZnInON歪量子井戸におけるエキシトン流の高効率生成およびその制御に注力する.具体的な研究方法は以下の通りである. まずZnInON歪量子井戸光照射およびキャリア注入の2つのアプローチによりエキシトン流の生成を行う.エキシトン再結合による発光の2次元分布とエキシトン生成位置等との関係からエキシトンの移動度,寿命,移動経路を調べ,本提案トランジスタのための最適超格子構造を取得する.次に本提案の酸窒化物半導体の特長-化学組成比によりバンドギャップを可視から近赤外まで連続的に変調可能-を利用し,エキシトン輸送方向におけるバンド構造変調(化学組成比変調)を行い高効率エキシトン流生成を実現する.さらに格子不整合度,井戸幅変調によるピエゾ電界制御を行い,エキシトン再結合位置の高精度制御を試みる.これにより,トランジスタのドレイン位置におけるエキシトン-光変換の制御性を向上させる.
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