研究実績の概要 |
最近我々は水酸塩化物M2(OH)3X物質群(MがCu2+, Ni2+, Co2+, Fe2+, Mn2+ 等の磁気イオン、XがハロゲンイオンCl-, Br-, I-)が結晶格子上の磁気イオンの幾何的配置によって磁気秩序化が抑制され量子磁性が出現する新規幾何学的フラストレーション物質であることを発見し、更にの水酸塩化物群において重水素化によってマルチフェロ新型強誘電性の可能性が出てきた。本提案研究では金属の腐食によって自然に水酸塩化物ができる特性、及びこれら物質の生体親和性を重視し、自然反応の模擬・進化によって、電子デバイス化と生体工学に応用可能な強誘電圧電性膜の金属基板上直接形成の技術の確立を目指した。 M2(OH)3X (Mが遷移金属、XがハロゲンイオンCl-, Br-, I-)との化学式で表記される遷移金属水酸塩化物系化合物は基礎金属化合物であり、自然界では広く存在する。例えば、Cuイオン系の正方晶四面体構造atacamite Cu2(OH)3Clはチリのアタカマイト地方のような酸性の砂漠で大量に存在し、銅緑として自由の女神や古い銅像の表面に生じることも知られている。 本研究では様々な酸性溶液中における金属の腐食挙動を実験によって調べ、電気化学法を用いた腐食において条件を細かく制御することによって金属表面に水酸塩化物の膜の作製に成功した。銅水酸塩化物であるclinoatacamiteCu2(OH)3Clの薄膜ー厚膜の作製法を確立しており、新奇強誘電現象を示したコバルト水酸塩化物の膜生成法も獲得した。今後より高温で発現する強誘電性水酸塩化物膜の直接形成を実施し生体親和型強誘電圧電膜の直接形成技術へ発展させる。
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