研究課題/領域番号 |
25630132
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 独立行政法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
早川 竜馬 独立行政法人物質・材料研究機構, その他部局等, 研究員 (90469768)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 分子 / スピン / 多機能メモリ / 自己組織化 |
研究概要 |
本研究では分子の持つ均一性、エネルギー準位の制御性、光制御、分子スピンといった優れた機能を量子ドットとして集積化することで従来の無機材料では実現できない多機能性単一スピンメモリを構築することを目指している。 平成25年度においては上記提案を実現するために強磁性電極であるCoおよびNi薄膜上に分子を量子ドットとして内包したトンネル2重接合を形成する手法を構築することに取り組んだ。分子にはフラーレン分子を用いて検討した。まず、NiおよびCo電極を電子ビーム蒸着により20nm程度形成し、原子層堆積法によりトンネル絶縁膜として用いる酸化アルミニウムが形成できるかどうか検討した。その結果、200℃程度の温度でSi基板上同様に絶縁性と表明平坦性に優れた酸化アルミニウム膜を形成することに成功した。またハーフメタルとして知られるLaSrMnO3上にも同様に製膜できることを確認した。次に分子を真空蒸着により基板上に単一分散させ、再度酸化アルミニウムを120 ℃において製膜することにより強磁性電極を伴った分子内包トンネル2重接合を形成できることを確認した。電流-電圧測定において20 Kのおいて分子軌道を介した単一電子トンネル電流を観測することに成功した。また、Si基板上ではあるが多機能メモリの実現に向けて異種分子を用いた多値制御および光異性化分子を用いた光制御に取り組んだ。フタロシアニン(p型)およびフッ素化フタロシアニン(n型)を交互蒸着し、混合分散させた試料を作成し、それぞれの分子準位においてトンネル電流を誘起できることを見出した。さらに光異性化分子であるジアリールエテン分子を用いて光によるトンネル電流の制御に成功した。本成果は多機能スピンメモリの実現へ向けた重要な成果である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究で強磁性電極を蒸着するために用いる電子ビーム蒸着装置が故障するといった当初想定していなかった事が起こったが、交付申請書に記載した平成25年度の研究計画に沿っておおむね進展している。特に本年度の重要課題であった強磁性電極上への分子内包トンネル2重接合を形成する手法の確立に成功した。また、強磁性電極上では無いがSi基板上において異種分子を用いたトンネル電流の多値制御や光異性化分子も用いた光制御にも成功している。平成26年度においては上記成果をさらに拡張し、単一スピン電流の観測と磁場による制御に取り組む。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の重要課題であった強磁性電極上への分子内包トンネル2重接合を形成する手法を確立し、分子を介した単一電子トンネル電流を観測することに成功した。また、Si基板上において異種分子を用いたトンネル電流の多値制御や光異性化分子を用いた光制御にも成功している。平成26年度においては上記成果をさらに拡張し、強磁性電極から注入される単一スピン電流の観測と磁場制御に取り組む。初めはフラーレンやフタロシアニンの分子軌道を介して単一スピン電流を制御できるか検討する。続いてスカンジウムを内包する金属内包フラーレンやコバルトやニッケルを中心金属にする金属錯体に変え、分子スピンによって単一スピン電流を制御することを目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究を進めるにあたり強磁性金属薄膜を作成するために用いていた電子ビーム蒸着装置が故障したため電極材料や基板など当初想定していた物品の購入を控えたため。 平成25年度の予算で上記装置の修理が完了したので平成26年度に蒸着用の電極材料や酸化物基板の購入に充てる。
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