研究実績の概要 |
本研究ではCMOS回路技術を用いたエネルギーハーベスティング回路の動作状態をモニタリングし、適応的に回路パラメータを再構築することで環境変動が生じても安定した電力効率を実現するためのシステムおよび要素回路の開発を行った。 はじめに、最大電力効率追従制御回路(MPPT)の動作をVerilog-AMSを用いたアナログ・デジタル混載シミュレーションで確認した。従来ハーベスティング電源回路のような低消費電力動作が求められるMPPTは電源回路の出力電圧の変化分を検出し、回収電力が最大となるよう山登り法を用いて制御されることが多いが、負荷変動に対して出力電圧が変動すると追従できない可能性がある。一方提案手法では負荷回路に供給する電源回路と、エネルギー回収を行う電源回路を分けることで、負荷変動に関わらず、回収電力を最大点に対して5%以内の範囲で制御できることを確認した。 次に低電力で上記の制御を可能とさせるための逐次比較型アナログ・デジタル変換器(SAR ADC)の検討を行った。当初計画では180nmプロセスを用いる予定であったが、目標とする消費電力に対して不足であったため、65nmプロセスを用いて検討を行った。0.6Vの動作において有効ビット9.1bit, 最大サンプリング周波数4MSpsを確認した。動作周波数10kHzにおいては0.1μWの電力で動作し、FoM=19.5fJ/conv.と当初の目標20fJ/conv.以下を達成した。これらの成果については学会等を通して今後発信していく予定である。
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