研究課題/領域番号 |
25630143
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
佐藤 弘明 静岡大学, 電子工学研究所, 助教 (00380113)
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研究分担者 |
猪川 洋 静岡大学, 電子工学研究所, 教授 (50393757)
董 金華 静岡大学, グリーン科学技術研究所, 特任助教 (80527838)
孫 芳芳 静岡大学, グリーン科学技術研究所, 助教 (40714176)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | バイオセンサー / 屈折率測定 / 表面プラズモンアンテナ / SOIフォトダイオード |
研究概要 |
蛍光標識なしで検体を検出するバイオセンサーとして、検体屈折率変化を光学的に測定するものが広く用いられている。本研究では、シリコンベースで光の利用効率が高く、より簡素な光学系で検体検出が可能となる、SP(surface plasmon)アンテナ付SOI(silicon-on-insulator)フォトダイオードを利用した方法を検討している。本年度の主な実績は、以下の2点である。 (1)SPアンテナ付SOIフォトダイオードによる検体屈折率変化測定の実現 測定の簡単化のため、まずは生体物質ではなく非導電性液体を用いた。フォトダイオードを非導電性液体に浸し、液体屈折率を調整することによってそれぞれの屈折率に対するフォトダイオードの分光感度変化を実測した。その結果、屈折率変化に対して有意なピーク波長シフトが観測された。この結果は、理論的に推定していた結果とよく一致していることも確認できた。また、同様の検出器としてはシリコン細線導波路で構成したリング共振器を利用するものが存在するが、その屈折率感度と同程度の性能を得ている。次年度は、この屈折率感度をどのように向上させられるかを検討する。 (2)屈折率感度の向上、および簡素な測定を目的とした1波長2ダイオード方式の検討 上記(1)における測定は、白色光源を分光してフォトダイオードに照射し、その波長を走査することによって液体屈折率に対する分光感度特性を評価してきた。これに対し、信号対雑音 (S/N) 比を高めて屈折率感度を向上させること、かつ波長走査を不要とするような、効率的な測定を可能とする方式を新たに提案した。具体的には光源をレーザー等に変更することによって、より高いパワーで単色の光を照射し、ピーク波長が異なる2つのフォトダイオードの光電流を比較する方式を提案した。現状では理論的な検討で、実験的な確認を急ぎたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の実施計画は、電磁界シミュレーションによるフォトダイオードの設計、試作、実測性能評価を1サイクルとして屈折率感度の性能向上を行った。その結果、フォトダイオードの設計指針が確立されたとともに、試作フォトダイオードが十分に高い屈折率感度を有することを実証できた。また、屈折率感度の向上方法について、計画時にはなかった手法を新たに提案している点は予想以上の実績と言える。一方で、バイオセンサーの重要な性能指標である測定可能な最小屈折率感度の評価については、雑音レベルの変動によって現状では困難であった。したがって本年度の達成度は、全体としてみればおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
1波長2ダイオード方式によってフォトダイオードの信号対雑音 (S/N) 比を高め、本年度に評価できなかった測定可能な最小屈折率感度を明示する。その上で、性能向上に向けた方法を検討する。さらに、実際にインフルエンザ(H5N1等)ウイルスの検出を試みる。金の回折格子型SPアンテナ表面に抗ウイルス抗体-インフルエンザウイルスを固定化して、ウイルスを定量的に検出する手法を確立する。研究の手順としては、まずは平坦な金表面への修飾実験を行った後に、抗ウイルス抗体およびインフルエンザウイルスの実効的な屈折率と厚さをエリプソメータによって測定する。さらに、電子顕微鏡や原子間力顕微鏡観察によって付着ウイルスの数を数える。これらの結果を基に、フォトダイオードの応答からウイルスの付着量を推定する方法を定める。
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