研究課題/領域番号 |
25630146
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
岩田 聡 名古屋大学, エコトピア科学研究所, 教授 (60151742)
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研究分担者 |
加藤 剛志 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (50303665)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | スピン波 / 磁性コロイド / 磁気センサ / 垂直磁化膜 / 磁性多層膜 |
研究概要 |
スピン波は,磁性体中を伝搬するスピンの波であるが,本研究では,このスピン波を利用した磁気センサの開発を目指している。具体的には,磁性薄膜の表面に検出すべき磁性微粒子が吸着したときのスピン波の伝搬モードの変化を電気信号として検出するセンサの開発を行う。DNAなどのさまざまな生体物質を酸化鉄の微粒子に吸着させ,この磁性微粒子を磁界によって集め,磁界センサによって検出を試みる検討が行われているが,十分な感度が得られているとは言えない。本研究は,スピン波の利用によって,より高い検出感度の実現を目標としている。まず,本年は,垂直磁気異方性を有するCo/Pt多層膜を作製し,その表面への酸化鉄微粒子を分散させたコロイド溶液を付着させたとき,垂直磁化膜の迷路磁区パターンに沿って,磁性微粒子が付着する様子を原子間力顕微鏡により観察した。磁性微粒子は,迷路磁区の磁壁に沿って付着しており,これは,磁壁付近に最も強い磁界勾配が発生していることによるものと考えられる。さらに磁性薄膜の微小領域の磁化状態を検出する方法として,異常ホール効果による磁界の検出を試みた。Co/Pt積層膜を細線に加工した後,膜面に垂直に磁界を加えながら,細線に電流を流すと電流の直交方向に異常ホール効果による起電力が発生する。Pt(1.1 nm)/Co(0.4nm)/MgO(2 nm)の薄膜を幅100μmの細線およびホール電圧を検出する電極を形成後に,外部磁界によるホール電圧を観測したところ,0.1mAの電流に対して,100μV程度のホール電圧が観察され,磁化ループの形状も加工前の磁化ループとほぼ一致した。検出部分の面積がやや大きいものの,Co/Pt積層膜を用いて異常ホール効果による磁界の検出が可能であることが確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年は,磁性微粒子がCo/Pt多層膜表面の磁壁に沿って吸着することが確認され,また,Co/Pt積層膜を細線に微細加工することで,異常ホール効果による磁界の検出が可能であることが示された。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度には,Co/Pt多層膜状に櫛形状の電極を作製して,スピン波の発生と検出を行うことで,磁性微粒子の検出を行うためのセンサデバイスの開発を行う。具体的には,磁性微粒子を吸着していない状態におけるスピン波の伝搬モードをネットワークアナライザにより計測する。このとき,Co/Pt膜が消磁状態のときと飽和状態のときの違いを調べ,膜の磁化状態によってスピン波の伝搬に違いが生じるかどうかを解析する。また,Co/Pt膜に酸化鉄の磁性コロイドを吸着させたときの伝搬モードの変化をコロイドの濃度,外部磁界をパラメータに詳細にデータを収集し,解析を進める。
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