研究課題
挑戦的萌芽研究
本研究の目的は、InP、InAs、GaAs など様々な半導体ならびにその半導体上に作成するメタマテリアルとグラフェンとの接合を作製し、フェムト秒パルスレーザー照射によって表面から発生するテラヘルツ波を観測することで、界面における光励起キャリアダイナミクス、バンド構造、ポテンシャル変化を評価する。また、グラフェン表面に吸着した気体分子がグラフェンのフェルミ準位や半導体の表面ポテンシャルに作用しテラヘルツ波の放射効率が変化する可能性がある。このような仮説に基づき、様々なガス雰囲気中でテラヘルツ放射特性を検証し、ガスセンサー応用の可能性を探求する。この時、外部バイアスによるフェルミ準位制御手法も用いることで、微量検出など新機能も探索する。本年度は、先ず、グラフェンを転写した半絶縁性InPにフェムト秒パルスレーザーを照射し、放射テラヘルツ波形計測およびその強度のマッピングを行った。その結果、InPだけの場合は、テラヘルツ波形は主に一つの大きなピークから成るが、グラフェンコートInPの場合は、測定初期段階では2つのピークが存在し、第1ピークは計測を続けると時間が経過するごとに増加し、第2ピークは逆に減少することを見いだした。一方、InPから放射されたテラヘルツ波形に関しては時間とともに変化が見られなかった。さらに、Graphene/InPからの放射テラヘルツ波を酸素、窒素、乾燥空気雰囲気中で測定をし、比較を行った。その結果、窒素ガス雰囲気中では、放射波形の時間変化は見られなかったが、酸素雰囲気中では大気中と同様の変化が見られた。以上の実験結果から、酸素分子のグラフェン表面への吸着・脱離が放射テラヘルツ波の波形に大きく影響を与えていることが確認できた。
2: おおむね順調に進展している
本研究で取り組む課題は、1)InP、GaAs、InAs 基板(様々な方位・ドーピング)上にCVD 法を用いてグラフェン薄膜を積層し、フェムト秒パルスレーザーを照射する。発生したテラヘルツ波の分光およびイメージングを行い、グラフェンのテラヘルツ時間領域分光および10μm以下の空間分解能でイメージングを行こと。2)ガス吸着・反応による放射テラヘルツ波の変化を観測すること。3)グラフェンと半導体の間にメタマテリアルを導入し、特定の周波数の応答や、テラヘルツ波増強による応答の変化、高いテラヘルツ電界による吸着分子の影響計測など評価すること。ならびに4)表面グラフェンに電界を印加することで、フェルミ準位などポテンシャル制御によるテラヘルツ放射特性の観測により、表面電荷ダイナミクスを調べることである。25年度は、当初の予定どおり1)および2)を中心に実験を行い、2)のグラフェン/半導体基板からのテラヘルツ放射に関しては、様々な基盤、ガス雰囲気下でのテラヘルツ波放射波形を計測し、ガス雰囲気によりテラヘルツ波形が劇的に変化することを見いだし、そのメカニズムを考察した。1)の空間分解能に関しては、グラフェンに関してはまだ十分評価できていないが、テストサンプルでは1μm程度の分解能を達成している。この様に、実験の進捗はほぼ当初の予定どおりであり、一部は計画より進んでいる。
本研究で取り組む課題は、1)InP、GaAs、InAs 基板(様々な方位・ドーピング)上にCVD 法を用いてグラフェン薄膜を積層し、フェムト秒パルスレーザーを照射する。発生したテラヘルツ波の分光およびイメージングを行い、グラフェンのテラヘルツ時間領域分光および10μm以下の空間分解能でイメージングを行こと。2)ガス吸着・反応による放射テラヘルツ波の変化を観測すること。3)グラフェンと半導体の間にメタマテリアルを導入し、特定の周波数の応答や、テラヘルツ波増強による応答の変化、高いテラヘルツ電界による吸着分子の影響計測など評価すること。ならびに4)表面グラフェンに電界を印加することで、フェルミ準位などポテンシャル制御によるテラヘルツ放射特性の観測により、表面電荷ダイナミクスを調べること、である。項目1)については、引き続き放射テラヘルツを観測するが、ポンププローブ法を用いてダイナミックな計測を実施するとともに、CW 光源による光励起も併用し、テラヘルツ放射電荷ダイナミクスを詳細に調べる。最終的には、テラヘルツ放射モデルを構築する。項目2)については、酸化および還元ガスの影響について、どのよう応答の差がみられるかを明らかにし、ガスによるグラフェンポテンシャルの変化と、テラヘルツ放射の関係を明らかにする。項目3)ではメタマテリアルを導入することで、周波数に依存した、テラヘルツ放射特性を明らかにし、センサーとしての高感度化を目指す。項目4)では、グラフェン表面に電界を印加し、その放射特性を明らかみすることで、グラフェン・半導体接合における光励起ダイナミクスを詳細に科学し、グラフェンの新しい物性と機能を露わにする。最終的には、他のデバイス開発の助けとなる知見を得る。
すべて 2014 2013
すべて 学会発表 (3件)