回路の物理設計を行うためにはその電磁気学的な性質を考慮した回路解析が必要となる。しかしながら、従来の数値電磁界解析手法は回路解析との親和性が乏しく、逆に、電磁界を回路素子で表現して回路解析を行う方法では電磁界を見ることができない欠点がある。本研究では、回路、電磁界双方の解析の自由度を最大限に活かす新たな手法の提案を行った。まず、電磁界解析の回路解析への親和性を高めるために、電界、磁界の解析に加えて、電磁ポテンシャルを計算する手法について検討を行った。しかしながら,電磁ポテンシャルの回路解析に及ぼす影響は非常に小さく,回路及び電磁界解析の結合には利用できないことが分かった。その後,従来研究で開発した回路シミュレータFALCONと電磁界解析を結合する方法について検討を行った。 最終年度では電磁界解析部分の効率化を達成するために,近年,並列計算機環境として注目されているXeon Phiを用いた電磁界解析の効率化について検討を行った。しかしながら,Xeon Phiを用いた電磁界解析は,最新のCPUを用いた場合に比べ,演算効率が劣ることが分かった。そこで,方向性を再び変え,最新のCPUを用いていかに回路・電磁界混合解析を行うかについて検討を行った。まず,前年度に非線形素子の容積を考慮する電磁界解析手法の提案を行ったが,これを並列計算機環境に実装する方法について2つの提案を行った。1つめの方法では,共有メモリ型の計算機で有利であるOpenMPを用いた。2つ目の方法では,分散メモリ型の計算機に適したMPIを用いた実装を行った。さらに,FALCONと電磁界解析を直接結合するために,回路解析に基づいた手法を新たに提案した。そして,OpenMP及びMPIそれぞれのプロトコルを用いてFALCONと直接結合を行い,提案手法の有効性について検証を行った。
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