研究課題/領域番号 |
25630155
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
江藤 剛治 立命館大学, 総合科学技術研究機構, 教授 (20088412)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 超高速 / 撮像素子 / イメージセンサ |
研究概要 |
研究開発目的は以下の3点である。1.基本撮像素子構造の選定、2.時間分解能1nsのマルチフレーミング撮像素子の設計と試作、3.時間分解能10ns以下の超高速撮像素子の利用可能性調査。以下、それぞれについて報告する。 1.基本撮像素子構造の選定:高速性、感度、実用性等の観点から、3種の構造に絞り込んだ。いずれも裏面照射マルチフレーミング撮像素子構造を持つ。(1) CCD型マルチフレーミング素子、(2) CCD型ビデオカメラ用素子、(3) CMOS型マルチフレーミング素子。具体的な素子構造を作り、基本的な性能を検討した。(1)のCCD型マルチフレーミング素子では連続10枚撮影可能である。当面開発する実用素子の時間分解能は1ns程度である。理論的な限界は10psである。(2)のビデオカメラ用撮像素子については概略設計を行った。時間分解能10ns、画素数100万、連続撮影枚数100枚の実用素子の開発が可能である。(3)のCMOS型マルチフレーミング素子についても構造を明確化したが、性能の評価は進んでいない。 2.時間分解能1nsのマルチフレーミング撮像素子の設計と試作:32×48画素の試作チップを設計した。IMECにおいてプロセスを開始した。さらにリングオシレータ型の専用ドライバーを設計し、テストチップをプロセス中である。 3.時間分解能10ns以下の超高速撮像素子の利用可能性調査:関連学会への出席、研究者や企業へのヒアリング等で調査を継続している。赤外線超高速撮像素子に意外に大きな需要があることがわかった。100万枚/秒を超えるような超高速撮影の撮影対象は急激な発熱を伴う現象が多いからである。例えば、爆発、プラズマ、衝突、破壊、溶射等などである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
1.基本撮像素子構造の選定:基本素子構造の選定は順調に進んでいる。性能についても、少なくともシミュレーション上は、実用レベルで当初の設定目標を十分達成できることが明らかとなった。理論的な限界については、例えばマルチフレーミングカメラの撮影速度の目標が1nsであったが、10psまで縮小可能であることがわかった。 2.時間分解能1nsのマルチフレーミング撮像素子の設計と試作:既に設計を完了し試作に入っている。通常、撮像素子の試作には数千万円が必要である。幸いIMEC(電子技術に関するヨーロッパ屈指の研究所)が代表者の提案した素子構造に興味を持っていただき、小さいテストチップを、他の試作素子の周辺に乗せていただいた。さらに撮像素子だけでなく専用ドライバーの試作チップも設計し、試作に回すことができた。 3.時間分解能10ns以下の超高速撮像素子の利用可能性調査:6月には米国ユタ州で開かれたIISW(International Image Sensor Workshop)に出席した。このワークショップは隔年で開かれ、世界のトップレベルのイメージセンサ設計者が一堂に会する。マルチフレーミング素子の構造について講演した。非常に高い評価を得た。同時に、超高速撮像素子の用途についての情報収集を行った。3月にはロンドンでIS2014(Image Sensor 2014)で招待講演を行った。参加者は約200名であった。その機会にイギリスに本拠を置くある企業から、ぜひマルチフレーミング素子を実用化したい、という申し出があった。これらの機会を通じて超高速撮影の用途に関する情報収集を続けている。現時点で最も大きな収穫は、赤外線超高速ビデオカメラに対して大きな需要があることが判明したことである。
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今後の研究の推進方策 |
1.基本撮像素子構造の選定:CMOS型マルチフレーミング素子の細部構造を明確にし、実用的な観点から期待される性能と、実際の試作および実用上の課題を明らかにする。さらに赤外線超高速撮像素子について、いくつかの構造例を比較検討し、性能と実用性の観点から望ましい素子構造を明らかにする。 2.時間分解能1nsのマルチフレーミング撮像素子の設計と試作:プロセス中のテストチップの試作が10月にできる予定である。それまでに評価機(バルクな評価カメラ)の試作を行う。その後は、年度末までにできる限り評価を続け、基本性能と課題を明確にする。同様に専用ドライバーのテストチップもできるので、並行して評価を行う。10月まで若干の時間的余裕ができるので、既に基本仕様を明らかにしているCCD型の1億枚/秒の撮像素子(時間分解能10ns)のテストチップを実際に設計する。できればこれもIMECに依頼して、プロセスしたい。 3.時間分解能10ns以下の超高速撮像素子の利用可能性調査:本年度は10月にICHSIP31(31th International Congress on High-Speed Imaging and Photonics)に出席する。この会議は隔年開催で、世界中の高速度撮影機器の開発者とユーザーが集まる。今回はポーランドで開催される。従って本調査には最適である。さらに2月に連携研究者のDao SonをElectronic Imagingに派遣し、CCD型マルチフレーミング素子について発表させる。この会議は毎年サンフランシスコで開かれ、撮像素子だけでなく、imaging技術に関する様々の分野の発表がある。本年度はこれらの調査結果を取りまとめて、1億枚/秒以上の撮像素子の開発と用途開発に関する向こう10年程度のロードマップを作成し、今後のこの分野の研究開発のための国際的指針として提供する。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度は、(1) CCD型マルチフレーミング素子、(2) CCD型ビデオカメラ用素子、(3) CMOS型マルチフレーミング素子の具体的な素子構造を作り、基本的な性能を検討した。また、時間分解能1nsのマルチフレーミング撮像素子の設計と試作。32×48画素の試作チップも設計した。3月17日がテープアウトの締切であったため、1月からシミュレーション作業補助を数名募集したが、なかなか応募がなく、1名見つかったのが2月なかごろであったため、予算を消化しきれなかったため。 今年度補助作業をしてくれた学生アルバイトを引き続きシミュレーションの作業補助として雇用する。
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