研究課題/領域番号 |
25630156
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研究機関 | 独立行政法人情報通信研究機構 |
研究代表者 |
川上 彰 独立行政法人情報通信研究機構, 未来ICT研究所ナノICT研究室, 主任研究員 (90359092)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 光アンテナ / 中赤外 / MIM / 微細加工技術 |
研究実績の概要 |
平成24年度からの基盤B「極限的微細加工技術による高速化・高効率化を目指したナノアンテナ結合型赤外検出器」により、既に中赤外光アンテナの設計・作製が可能であることを示している。本研究課題は、分布定数型Metal-Insulator-Metal (MIM)トンネルダイオードの研究を行い、この中赤外光アンテナ構造と組み合わせることで、室温300 K放射からの微弱電力の抽出を目指している。 同ダイオードは仕事関数が異なる二種類の金属で1nm程度のトンネルバリアを挟んだ構造で、比較的大きな接合容量が存在する。その結果として集中定数型ダイオードでは高周波的に短絡してしまい中赤外電磁波に対する応答は不可能である、本研究ではトンネル構造を分布定数線路と見なした分布定数型線路ダイオードを想定している。この場合、線路特性インピーダンスは必然的に低くなる為、線路幅を極力狭くして入力インピーダンスを確保する必要がある。平成25年度は線路幅の狭いMIM線路ダイオード構造を作製する為、電子線描画による窒化ニオブ(NbN)薄膜の微細加工法を検討した。現在想定しているダイオード作製プロセスでは、このNbN薄膜を無機レジストとして使用し、ダイオード電極の極微細パターニングを行う。同年度において幅200 nmのNbN細線(膜厚200 nm)の形成に成功した。平成26年度は微細加工の最適化とプロセス検討を行い、アンテナおよびマイクロストリップ線路を構成する金薄膜細線(膜厚50nm、幅100 nm)の形成に成功した。並行してフォトリソグラフィによりMIMダイオードの試作し、その直流特性測定を評価、微弱であるが正負非対象の直流特性を観測した。またアンテナからの入射赤外電磁波をMIMダイオードに伝達する分布定数線路を試作、中赤外電磁波がマイクロストリップ線路を伝達することを確認、その位相定数を評価した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本課題研究計画における平成26年度達成目標であるMIMトンネルダイオードの試作及び直流特性評価は開始した段階であり、トンネル抵抗のバリア厚依存性、素子再現性等の評価は充分でない。電子線描画を用いたMIMダイオード作製プロセスの確立は、微細金属細線の形成など達成しているが、更に層間絶縁の形成法など多くの検討が必要である。従って現状の研究状況を鑑みて区分(3)が妥当であると考える。
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今後の研究の推進方策 |
フォトリソグラフィによるMIMトンネルダイオードの直流特性評価を進め、トンネル抵抗のバリア厚依存性等ダイオード特性の評価を実施すると共に、電子線描画を用いた分布定数型MIMトンネルダイオードの作製プロセスを確立、同ダイオードの試作・特性評価を実施、本課題目的である中赤外光から直流電力を抽出する技術の可能性を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
電子線描画による素子作製プロセスの検討に注力した結果、平成26年度に予定していたMIMトンネルダイオードの直流特性評価系構築に必要な微少電流計の整備が遅れ、平成27年度実施に変更した。
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次年度使用額の使用計画 |
平成26年度に購入を予定していた微少電流計を平成27年度に整備し、分布定数型MIM特性評価系を構築する。
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