本研究課題は、中赤外領域におけるマイクロストリップ線路、分布定数型Metal-Insulator-Metal (MIM)トンネルダイオードの研究を行い、中赤外光アンテナ構造と組み合わせることで、室温300 K放射からの微弱電力の抽出を目指している。 同ダイオードは仕事関数が異なる二種類の金属でトンネルバリアを挟んだ構造で、対向面間には大きな接合容量が存在するため集中定数型ダイオードでは高周波的に短絡してしまう。そこで本研究では、トンネル構造を分布定数線路と見なし、中赤外電磁波が伝送する間に徐々に整流する分布定数型ダイオードを想定している。この場合、極端に薄い(1 nm程度)トンネルバリアを使用するため、線路特性インピーダンスは必然的に低くなることが予想される。その為、線路幅を極力狭くして入力インピーダンスを確保する必要がある。まず平成25年度は、電子線描画による窒化ニオブ(NbN)薄膜の微細加工法の検討を実施した。イオンビームスパッタ法による酸化マグネシウム(MgO)薄膜を無機レジストとして使用、反応性エッチングにより幅200 nmのNbN細線(膜厚200 nm)の形成に成功した。次に平成から26年度は、中赤外光アンテナとマイクロストリップ線路共振器とを接続し、フーリエ分光光度計を用いて共振特性を評価することで、中赤外光マイクロストリップ線路の線路内波長,位相速度など整合回路構築に必要な基礎特性の評価に成功した。並行してフォトリソグラフィによりNb/MgO/TiN-MIMダイオードを試作し、その直流特性を評価、微弱ではあるが正負非対称の直流特性を観測した。平成27年度は中赤外光アンテナ、マイクロストリップインピーダンス整合器と分布定数型MIMダイオードの設計を行い、試作およびその直流特性の測定を実施した。
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