研究課題/領域番号 |
25630161
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
岡村 康行 大阪大学, 基礎工学研究科, 教授 (80144442)
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研究分担者 |
塩見 英久 大阪大学, 基礎工学研究科, 助教 (00324822)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 電力回生 / 線形化電力増幅器 / アウトフェーズ増幅 / 低電圧駆動整流器 |
研究実績の概要 |
平成26年度は、電力帰還系統のシミュレーション検討、新しい高周波帰還型の電力効率向上方式、0.18um CMOS プロセスを用いた電圧制御発振器の試作、アウトフェーズ信号生成手法について検討した。電流帰還系統のシミュレーション検討から、逆流防止用ダイオードによる電圧降下が弱電力出力時の電力回収効率に悪影響を及ぼすことがわかった。そのため、できるだけ低しきい値のダイオードを用いること、高周波信号のまま電力をデバイスへ帰還する手法を用いることの検討を行った。その結果、薄膜BOX-SOI構造を用いた低しきい値のダイオードが期待できること、また、並列増幅器の出力を意図的に結合させ増幅器間で励振位相差をつけることにより、それぞれの増幅器の負荷インピーダンスを制御可能であることを見出した。試作した電圧制御発振器はプッシュプッシュ構成のLC発振器と、3逓倍プッシュプッシュ構成のリング発振器である。リング発振器は周波数13.54GHz、電力-32.6dBmの出力信号が得られた。基本波抑圧比は11dB得られた。変調感度は2.2GHz/Vで、このときの出力変動は5dB以内であった。出力電力がより改善されればアウトフェーズ増幅の信号源として利用可能と考えられる。LC発振器は評価が難航している。原因として、ボンディングワイヤの寄生インダクタンスが発振器の共振周波数を離調させてしまっていることが考えられる。高周波プローブを用いた再評価が望まれる。アウトフェーズ信号の生成手法については、シミュレーション検討を行った。本研究で用いている同相逆相モード毎に信号を分離する手法を用いると実質的に同一の帯域のAD変換器を用いてアウトフェーズ信号を生成できることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、電力回収機構を備えた新しい高効率無線送信回路を実現することである。これまでに、直流変換方式と高周波直接帰還方式について検討した。また、アウトフェーズ送信回路の位相変調部に利用する発振器を集積回路にて試作することができた。集積回路技術により発振源を試作することができたが、出力振幅の改善が求められるため、5割程度の達成できたと考えている。ただし、集積回路による発振器試作は当初計画を超えた取り組みである。電力回収回路については、集積回路化の検討と新方式の検討を行ったため、計画になかった知見が得られている。アウトフェーズ信号の効率的な生成は、計算機シミュレーション検討が終わっており、比較的容易に変調信号を得る手法であることが確認できた。これらの成果から、本研究の目的を総合的に七割程度達成できたと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
これまで、アウトフェーズ増幅技術はベクトル変調波の効率的な増幅に限定して検討してきた。ところが、これまでの検討結果を踏まえると、アウトフェーズ変調技術はベクトル変調波に対して非線形性を利用した様々な効果を作用させることができる技術であると一般化できることを見出した。たとえば、マイクロ波帯の高精度なベクトル変調波を逓倍してミリ波サブミリ波帯の変調波を容易に得ることもできる。また、オリンピック開催に向けて世界に先駆けた5Gセルラ通信の検討が盛んになっており、ミリ波帯無線通信回路の低消費電力化が強く求められるようになった。そこで、これらの動向を取り入れ、本研究での回路動作周波数帯を数GHz帯のマイクロ波帯からミリ波帯(30GHz超)を目標に変更する。最終年度は、40GHzでの動作を目標に、逓倍型のアウトフェーズ増幅器について試作検討する。0.18um/65nmのCMOSプロセスを利用して逓倍機能を兼ね備えた電力増幅器及び直流電力回収機構を備えたハイブリッド分配器の試作、高周波帰還型アウトフェーズ増幅器の低歪み化の検討を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度に、当初計画では利用できなかった 65nm CMOS プロセスが新たに利用できる見込みとなり、ミリ波シリコン集積回路での実装評価を行うことで研究成果を大幅に飛躍できると期待されるため、試作計画を変更し、電子部品充当額の一部を次年度へ繰り越しした。
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次年度使用額の使用計画 |
支払いの一部を次年度使用額へ充当する。
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