研究課題
前年度に開発した受信ビームフォーミング法および断層像構築手法では,球面拡散波により超音波が照射された範囲に関して,異なる角度で多数の受信集束ビームを形成することにより超音波断層像を構築している.球面拡散波を用いた超音波イメージングでは,多数の送信・受信角度において得られた超音波信号を重ね合わせて断層像を構築するため,超音波断層像の角度依存性を低減できる.その結果,頸動脈壁短軸断面のように超音波の入射角度により反射強度が大きく変化し,描出可能領域が制限されるようなターゲットに対して,集束送信ビームを用いた従来のビームフォーミング法に比べ,球面拡散送信ビームを用いた提案手法の方が描出可能範囲が拡大されることを,模擬血管を用いて評価した.また,球面拡散ビームを用いた超音波イメージング法に基づく,対象物の変位計測法に関する研究を行った.変位計測については,血流速度ベクトル計測のための2次元変位推定法の開発を行った.超音波ドプラ法による従来の速度計測法では,ある1つの超音波ビーム方向の速度成分のみが推定されていたが,本計測法では,球面拡散ビームを用いた超高速超音波イメージング法とパターンマッチングを用いた2次元変位推定法を組み合わせることにより血流速度ベクトルの推定を実現した.球面拡散送信ビームを用いたイメージングでは,空間分解能およびコントラストが劣化するため,得られた断層像を用いた変位推定の精度も劣化する.前年度に開発した高空間分解能化・高コントラスト化手法を用いることにより,2次元変位(速度)ベクトルの推定精度も向上することが示された.ヒトを対象としたin vivo計測では,心臓内腔の複雑な血流動態のイメージングに成功し,その有効性を示すことができた.
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