本研究は,申請者らのこれまでの研究成果を基礎にして,手術時の脊髄損傷リスク回避のための超音波による脊椎内構造のイメージングシステムの開発を目的として行われ,以下のような成果が得られた. 骨内イメージングが可能であることを確認するため,まずは単一振動子の素子を制作し,実際の骨を用いた反射波測定実験と反射波データの取得ができるようにした.ここでは骨との音響カップリングを考慮して送受信素子面を直径5~3mmのベークライト製のセンサーを製作した.直径の小さいセンサーは,感度,耐久面で不十分であるが,穿孔内に挿入し,反射波を検出できることを明らかにした. 食用牛の脊椎を用いた反射波計測実験を実施し,孔底と素子間の多重反射の状況,脊椎内部からの反射波,散乱波の状況等を検討した.マイクロCTにより穿孔した試料の3次元イメージングを行い,未切削の骨の部分の内部構造,骨厚を測定し,その結果と超音波による測定結果と比較,検討した.入力パルスと反射波間の時間差が小さいことから,入力波と反射波の重畳,多重反射波が主要課題となるが,本研究では,多項式で直接反射波除去フィルターを開発した.超音波の中心周波数を3.5MHz,10MHz,15MHzで検討したところ,1mmから3mmの骨厚を測定する場合,10MHzが最適であることを明らかにした. 得られた結果は,整形外科学会で発表を行った.また,本研究で得られた結果を基に,脊椎穿孔時のモニタリングシステムと方法に関する特許出願準備を行った.
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