実システムの多くは、その状態が時間域において連続的に変化するのに対して、現代制御系の多くは離散時間におけるデジタル制御が主流である。この場合、連続的に変化する変数を離散的な量化された変数に変換して扱わなければならないが、その離散的量化処理は元のシステムの近似表現であると同時に、サンプリング・ホルディング型制御アクチュエータに不必要な負担を与えないメリットもある。また、その制御アルゴリズムの設計や解析、実現に論理変数を用いて論理システム論の枠組みで扱うことが可能である。 本研究では、このような連続時間域における動的システムを離散時間同的論理システムとしてモデル化し、そのモデルに基づいて論理化制御を行う制御系設計手法を確立することを目的とした。特に確率性を伴うシステムに対して、統計的最適化制御器の設計手法を構築し、エンジンの燃焼ばらつき抑制制御問題への応用の可能性を検証した。 本年度は、前年度まで構築した連続時間域の動的システムを離散時間確率論理システムとして表現する手法と、そのモデルに基づく最適制御器の導出アルゴリズムを適用して、内燃機関であるガソリンエンジンの残留ガス割合の燃焼サイクル毎に遷移する確率遷移モデルに基づく残留ガスばらつき抑制制御系を設計し、実験検証によってその有効性を確認した。また、ハイブリット自動車のリアルタイムエネルギマネジメント問題を得られた論理システムの最適化手法を適用して解法を構築し、シミュレーション検証を行った。これらの実制御問題への適用は本研究で得られたい論理システム論による連続時間システムの制御の有効性を示したことになる。
|