研究課題/領域番号 |
25630182
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
浅本 晋吾 埼玉大学, 理工学研究科, 准教授 (50436333)
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研究分担者 |
長田 昌彦 埼玉大学, 地圏科学研究センター, 准教授 (00214114)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 二酸化炭素地下貯留 / スチーム補助重力排油法 / 油井セメント / 有害ガス漏洩 / 混和材 / ポリマー |
研究概要 |
本研究では,二酸化炭素地下貯留(以下,CCS),スチーム補助重力排油法(以下,SAGD)プロジェクトにおいて,有害ガスの地上漏洩リスクを解析,実験の両面から検討・検証し,鋼管と掘削地盤を埋める油井セメントに,混和材,ポリマーを混入することの有用性を確認し,施工性,耐久性も併せ持つ高機能油井セメントの開発を研究目的としている. 本年度は,SAGD坑井に使用されるセメント硬化体が200℃という高温に曝されたときの強熱減量,空隙構造,圧縮強度について,基礎的な検討を行った.セメントは,油井セメント(OWC),普通ポルトランドセメント(OPC),OWCの全質量の20%をフライアッシュセメントに置換したもの(OWCFA)の3種類とした.20℃の封緘養生を材齢28日まで行い,高温曝露を行った.その結果,200℃乾燥曝露後の圧縮強度においてOWCとOPCでは違いは見られなかったが,OWCFAでは強度増加の割合が大きくなった.一方で,200℃湿空封緘に曝露した供試体は,いずれも圧縮強度が大きく低下した.内部の飽和水の熱膨張で,微細なひび割れが発生し,湿空封緘環境であるためひび割れは水で飽和したままで固体の表面エネルギーは増加せず,ひび割れが伸展しやすく強度が大きく低下したことなどが理由として推察された. また,地下の高温,高圧下でCO2に曝されるCCS坑井のセメントペーストの炭酸化進行,それに伴う空隙構造および透気性変化について実験的検討を行った。その結果,炭酸化によって空隙構造は一度緻密化した後,粗大化することが実験的に確認された.また,養生・曝露条件による炭酸化の進行速度は,水中,湿空,塩水中の順で大きいことが分かった.さらに,水和生成物,空隙構造,透気係数の変化について総合的に検討した結果,油井セメント単体で用いるよりも,ポゾラン反応で緻密性を発揮するフライアッシュを混入した方が,超臨界CO2という特殊環境ではガス漏洩防止に有効であることが示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
CCSにおいては,フライアッシュを混和させると,超臨界CO2という特殊環境ではガス漏洩防止に有効であることが示唆され,油井セメント単体もしくはシリカフューム混和を坑井のセメントとして考えている石油分野にはない新しい知見と考えられる.鋼管熱膨張試験も実施したが,温度が急激に上昇しなかったため,これについては実験方法を再度検討する必要がある.解析もOxand社の協力のもと,実施しつつある.
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今後の研究の推進方策 |
本年度は,セメントペーストと鋼管との界面剥離,熱膨張によるセメントペーストのひび割れを,ポリマーも混和させて検討する.また,ポリマー混入によってセメントスラリーのレオロジー特性が大きく変わると考えられるため,スラリー性状の検討も行う.さらに,本年度と昨年度の透気係数などの実験結果を入力パラメータにして,FEM解析によるガス漏洩シミュレーションも同時に進める.
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次年度の研究費の使用計画 |
初年度は,200℃や高温高圧でのCO2曝露によるセメント硬化体の物性試験を中心に実施し,周辺地盤の影響などの検討をポリマー混入セメントの開発と同時に行うことにしたため,拘束フレームなどの予算を次年度に繰り越した.よって,坑井境界地盤のモデル化を担当予定であった分担者の長田准教授は,費用を使用していない. ポリマー混入セメントの粘度計測などは,API規格に沿わない粘度計測計を購入するのではなく,油井セメント製造業者にAPIの規格に沿った計測を依頼することとし,その計測費用を計上する.粘度計測計を購入しない分の費用を,セメント硬化体と鋼管との相互作用の実験に配分して,綿密な実験計画を立てる.
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