橋梁など構造物の挙動や性能を適切に把握することは,設計や管理において考慮すべき不確定性を低減し,効率的な建設・維持管理によるコスト削減や安全性向上をもたらすと期待される.構造物の現状を設計時の想定と比較したり,経年変化を把握したりする指標としては,固有振動数が多く利用されてきた.計測技術の進展もあり,振動数推定も容易になりつつある.しかしながら,道路事業者や地方自治体が管理する橋梁は多数で,それらの動特性把握には手間と時間を要し,データの把握・蓄積には至っていない.そこで,本研究では,複数の移動車両に加速度計とGPSを設置し,互いに正確な時刻同期をとりながら橋梁上を走行することで,橋梁振動特性を把握する,簡便な方法を開発し,実橋梁で検証を行った. まず,橋梁の有限要素モデルと車両ハーフカーモデルを利用して,車両・橋梁の相互作用を考慮した数値シミュレーションを実施した.車両特性,走行速度,2車両間の距離をパラメータとして,様々なケースの橋梁・車両応答を算出した.1車両の加速度応答パワースペクトルでは,橋梁固有振動数以外にも複数のスペクトルピークがあり,橋梁固有振動数を一意に推定することが難しいが,2車両の加速度応答のクロススペクトルを算出することで,橋梁固有振動数のみを抽出できることを示した. さらに,実橋梁で車両2台を利用して走行試験を行った.GPSを利用して2車両の計測データを同期し,クロススペクトルを算出することで橋梁固有振動数を抽出できることを示した.
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