コンクリート中にある腐食鉄筋について,X 線技術によりその腐食状態の可視化を行うとともに,X 線画像から面積の減少量を推定するための画像処理方法を検討した。さらに,本手法を電食により鉄筋を腐食させたRCはりに適用し,鉄筋腐食成長過程の観察に関する基礎検討を行った。本研究で得られた主な結論を以下に示す。 1)X 線技術と,ディジタル画像処理方法を工夫することで,コンクリート中にある鉄筋の非腐食域を3次元的に抽出することが可能である。画像処理方法として,モード法とエッジ検出を用いたが,コンクリート中の鉄筋を撮影する目的に対しては,エッジ検出の方が適している。エッジ検出による場合には,本研究で用いた空間フィルタのオペレータが有効である。 2)本研究で設定した範囲の水セメント比や供試体形状,あるいはコンクリートとモルタルの違いなどは,X 線画像に大きな影響を及ぼさない。X 線画像から推定される質量減少率は,これらの因子によらず,概ね質量測定から得られる質量減少率に近い値となることを確認した。 3)今後,電食と実環境や乾湿繰り返し環境に暴露されるRC はりで生じる鉄筋腐食の成長過程の違いや,せん断補強鉄筋が腐食ひび割れ幅の成長に及ぼす影響など,本研究で検討できていない内容についての継続的な研究が必要である。しかし,本研究で実施した基礎検討から,RC はりを3次元X 線撮影することで,部材内の鉄筋腐食成長過程の観察,鉄筋腐食の不均一さの形成過程と不均一さの程度のモデル化に必要な情報の入手,鉄筋腐食量と腐食ひび割れ幅の関係,また,鉄筋腐食の分布と曲げ耐力の関係などの考察が可能であることを確認した。
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