研究課題
挑戦的萌芽研究
東日本大震災発生した大量の災害廃棄物は,高度な選別処理技術を駆使して再資源化が図られており,分別された土砂分は地盤材料としての有効利用が期待されている。しかし,分別土砂中には除去しきれない木くず等の可燃物が相当量混入しており,その腐植劣化が長期的な特性に及ぼす影響について検討する必要がある。平成25年度は,木くずの混入量,木くずのサイズ等が地盤材料としての力学特性に及ぼす影響について,室内実験による検討を中心に行った。その結果,JIS規格で定められた750℃での強熱では,結晶水等も評価してしまい可燃物混入量は同定できないが,燃焼温度を350℃とすることで可燃物混入量と同程度の減量が得られることが分かった。また,木くず混入量が増加するほど締固め性は悪くなり強度も低下するため,地盤材料として利用し難くなること,同程度の木くず混入量であれば,小さい木くずが多いほど,土粒子と木くずが相互に噛み合い,強度が高くなること,等が明らかとなった。よって,木くず混入量のみならず,その大きさを評価することも,地盤材料としての利用性を検討する上で重要であると言える。一方で海水由来の膠着性により,現場分別土は比較的高い強度を有することも明らかとなった。次に,有機物の腐食に伴う間隙構造の変化が強度特性に及ぼす影響についても検討を行った。具体的には,模擬分別土を室内配合により作製し,混合した木くずが腐食により消失し空隙へと変化した場合の,強度特性の変化を評価した。その結果,木くず混入量に関わらず,木くずが腐食し空隙が増すことで粒子同士の接触が失われ,強度は低下することが明らかとなった。しかし,実環境下での分別土砂中の木くずの潜在的な腐食可能性,及び腐食後の間隙構造の変化については未解明な点も多く,実現象と関連付けて精査する必要がある。
2: おおむね順調に進展している
本研究では,木くず等の混入が分別土砂の力学特性に及ぼす影響,木くずの腐植性を考慮した力学特性,及び分別土砂の品質を決定付ける処理要因,を明らかにすることを最終的な目標としている。平成25年度はそのうち,木くず等の混入量及び木くずのサイズが分別土砂の力学特性に及ぼす影響,及び木くずの腐食分解に伴う間隙構造の変化が力学特性に及ぼす影響について明らかにした。前者については,当初予定どおりの成果が得られており,既に対外的な発表を通じ発信するとともに,関係するマニュアルやガイドライン等にも反映されている。後者については,加速化等の時間軸も考慮し木くずを実際に腐植させることは難しいものの,腐食発生後を想定した供試体を用いることで再現を果たした。
平成26年度は,分別土砂に含まれる木くずの腐植性を評価するとともに,分別土砂の品質決定要因を,資料調査及び室内試験により明らかにする。具体的には,前者に関しては,ドイツのGartest(GB21)試験のような腐植性成分評価により木くず等の可燃物の腐食可能性を検討し,平成25年度に実施した要素試験結果と併せ,分別土砂の腐食劣化に伴う特性変化を取りまとめる。また後者に関しては,資料等調査により,各現場で導入された処理システムを整理し,現場ごとの処理方法の差異を明確にするとともに,室内模擬プラント試験により工程や処理設備の違いが分別土砂の品質に及ぼす影響について,特に分別土砂中の木くず量の観点から検討を行う予定である。
平成25年度に実施した室内試験等については,既に保有していた設備及び消耗品類で検討することが可能であったため,主に土質材料の購入代金等に充当した。平成26年度は,腐植性評価等の実施にあたり新規に実験環境を整備する必要があること,及び資料収集のため東北各県での現地調査等が予定されることから,発生した次年度使用額をこれらに充当する。
すべて 2013 その他
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (10件) (うち招待講演 1件) 備考 (2件)
地盤工学ジャーナル
巻: Vol.8, No.3 ページ: pp.391-402
3RINCs and SWAPI 2014
巻: - ページ: pp37-44
Geo-Environmental Engineering 2013
巻: - ページ: pp.130-136
http://geotech.gee.kyoto-u.ac.jp/
http://geotech.gee.kyoto-u.ac.jp/JGS/