研究実績の概要 |
東日本大震災により東北地方から関東地方の広範囲にわたって河川堤防が被災し、その原因は、堤防の自重により発生した柔らかい基礎地盤のめり込み部において堤体内液状化とされている。そこで土の毛管上昇作用を利用したサクションポンプの開発を進めてきた。 最終年度は、昨年度に引き続き、キャピラリーバリアの発生を抑止することの実験に加えて3次元飽和不飽和浸透解析により、実堤防を模したシミュレーションを実施し,その結果、以下のことが得られた。 毛管上昇高の計測や毛管上昇を利用したサイフォン実験から、(1)初期飽和度が高くなるほど、ポンプの排水(時間排水量)が速く発揮されるが、長時間経過した平衡後にはほぼ同じになることを再確認した。(2)毛管上昇高が大きく、また透水係数が大きいほど、時間排水量が大きく効率がよいことから、両者を併せ持つ材料が適していることがいえた。 (3) 本ポンプの排水機能は毛管上昇による吸引と重力排水を期待するものであるが、排水口においては大気中に開放される形となり、どんな試料土を使用しても排水口でのキャピラリーバリアが発生する。そこで排水口を傾斜させることでキャピラリーバリアの発生を抑止することに成功した。(4)実際の堤防に設置する場合を想定したポンプ形状について検討を行った結果、堤体裏のり面に沿って傾斜することで浸透距離が長くなり排水に時間はかかるものの、最終的には排水量の差はないことを確認した。こ(5)天端2m、のり勾配1:5の砂質堤防を想定した3次元解析シミュレーションでは、4時間ほどで堤体の水位が低下し始めることが確認できた。最終的には100時間以上の時間が要することが得られたが、本ポンプは地震発生までの長時間の間に低下させることを考慮しているため、排水時間の影響は少ないものと考えられた。
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