研究実績の概要 |
石灰岩で形成された河床上には,主として二種類の特徴的なステップ地形が見られる.一つは鍾乳洞の内部や石灰分を含んだ温水が湧出する場所に見られる数十センチから数メートルのスケールを持つ石灰華段であり,もう一つはクロアチアのプリトヴィッツェ湖群に代表される数百メートルから数キロのスケールを持つ石灰岩ダム群である.前者の石灰華段が脱炭酸ガス過程による石灰岩の析出という純粋に化学的な作用によって形成されるのに対して,後者は石灰岩ダムの頂部に生息するコケやバクテリアによる生物的な脱炭酸ガス作用が重要な役割を果たしている. 生物学的な作用による石灰岩の析出プロセスの数学モデルを構築した.モデルを用いて石灰岩ダムの成長過程および形状を変化させずに一定速度で成長する石灰岩ダムの形状を解析的に導き,ダム成長の条件を明らかにした.また,クロアチアのプリトヴィツェ湖群の現地調査を行うことで,モデルの妥当性を検証した. 平成25年度の実験は,ドライアイスを溶かす事によってpHを下げた液体(蒸留水)にCa(OH)2の粉末を溶かし込み,それを一度あたためてから水路に流す事によって,水路内に石灰質の沈積と,小規模ながらステップの形成が確認された.今年度は石灰質の沈積速度を上げるとともに,溶液中のカルシウムイオン濃度を正確にモニターできるよう装置を改良した.水路は長さ2m,幅6cm, 高さ5cmのアクリル製で,水路底面に石灰岩の石材タイルを貼り付けた.二酸化炭素を送り続けることで炭酸カルシウムの粉末を溶かしたタンク内の蒸留水を水路に通水した.総実験時間180時間程度流した結果,水路底面の石灰岩タイルの上に白い膜状に石灰質が堆積した. 実験で見られるような純粋に化学的作用によって形成されるステップ地形の形成プロセスに関する数学モデルを提案した.その解析については今後の課題である.
|