研究課題/領域番号 |
25630206
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
佐々木 淳 東京大学, 新領域創成科学研究科, 教授 (50292884)
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研究分担者 |
鈴木 崇之 横浜国立大学, 都市イノベーション研究院, 准教授 (90397084)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 水工水理学 / 海岸工学 / 2011年東日本大震災 / 東京湾 / 放射能 / リスク評価 |
研究実績の概要 |
平成27年度は平成26年度に引き続き,東京湾を対象として,行政等による既往の底質中放射能(Cs137)測定データを収集し,その時空間分布について整理検討を行った.また,東京湾奥部において,約50cm長さの底質コアの採取を行い,各層に分割後,ガンマ線スペクトロメータを用いた放射能測定を行った.底質コア分析から得られた放射能は表層直下に極大値を持つ分布を示し,中層から下層において過去のチェルノブイリ原発事故や過去に実施された水爆実験等が反映されたと考えられるピークが出現することを再確認した. 東京湾底質における放射能の2次拡散に着目し,底質中放射能分布の把握,魚介類を含む底質汚染によるエンドポイントの同定,およびそのリスク評価として,損失余命に着目した評価を実施した.評価に際しては他の交通事故等を含む様々なリスクの間での相対評価を行った.さらに,この底質放射能汚染に起因するリスクが他のリスクと比較してどのように認識されているか明らかにするため,アンケート調査に基づき,仮想評価法に基づき貨幣換算を行った.他のリスクと比較して,東京湾底質の放射能汚染に関するリスクに対する不安は低い結果となった.魚介類が含む放射能の値を開示する場合としない場合でアンケートを実施したところ,情報を開示するとリスクを高く認識することが判明した.さらに,仮想評価法による対策への支払い意思額の中央値は他の環境施策の場合の約4倍となる結果が得られた.この結果は,他のリスクに比べ,東京湾底質放射能の2次拡散によるリスクに対する不安は通常低いレベルにあるが,具体的な情報を示すと不安のレベルが上がり,対策への支払い意思額も顕著に増大する傾向があることが分かった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成27年度は底質コア試料の放射能分析およびアンケート調査による東京湾底質における放射能2次拡散に関する相対リスク評価を実施した.放射能分析では現有設備であるγ線スペクトロメータの利用時間が他との調整で予定より短縮されたため,分析に遅れが生じた.そのため平成28年度も引き続き本研究を継続し,予定通り分析を進めて行く予定である.一方,アンケート調査については概ね予定通り実施することができ,東京湾底質の放射能汚染という低レベルで普段あまり関心を引かない事象に対して,人びとがどのようにリスクを感じ,また,情報を開示することでそれがどのように変化するのかについて興味深い示唆が得られたと考えている.
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は平成27年度に完了しなかった,東京湾において採取した底質コアの放射能分析を進めて行く予定である.また,アンケート結果の解析を進めると同時に,必要に応じてアンケート調査を追加する等検討し,低レベルの放射能汚染に関する人々のリスクの感じ方や実際のリスクとの差異について考察を加え,本研究のとりまとめを行って行く予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度には装置資源の制約等もあり,放射能分析に遅れが生じたこと等により,研究期間を平成28年度まで延長し,この目的のため次年度使用額を残すこととした.
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度に完了できなかった放射能分析を継続するための費用,および研究をとりまとめるための費用として,次年度使用額はこれに充てる予定としている.
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