研究課題/領域番号 |
25630217
|
研究種目 |
挑戦的萌芽研究
|
研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
井料 隆雅 神戸大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (10362758)
|
研究分担者 |
原 祐輔 東北大学, 学内共同利用施設等, 助教 (50647683)
日下部 貴彦 東京工業大学, 理工学研究科, 助教 (80604610)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 個人情報 / 交通行動データ / 交通システム |
研究概要 |
平成25年度は,(1)一般的な交通システムを記述する数理モデル「交通システムモデル」の定式化,(2)交通行動データの収集行為を記述する数理モデル「データ収集モデル」の定式化,(3)交通行動データの量および質と交通システムのパフォーマンス向上の関係の分析の着手,を行った. (1)の交通システムモデルの定式化では,本研究の分析対象とする交通システムのモデルを数理的に定式化した.本研究では交通システムのモデルを不必要に精緻化することは避け,交通システムの特徴として重要な「容量制約」に着目したモデルを作成した.このモデルでは利用者数を(交通工学で一般的な連続量近似ではなく)離散的な数としてとらえ,その結果利用者数が統計学的なゆらぎに支配されることを明示している. (2)のデータ収集モデルの定式化では,まず,「最も精緻なレベルでの交通行動データ」を「Extreme Life Logger」という言葉を用いて概念的に定式化した.「Extreme Life Logger」では,まず人間の交通行動のメカニズムを「情報や条件の呈示(Input)」「情報処理(Process)」「交通行動(Output)」の3段階に分割し,このうち「Input」「Output」のみが第3者からデータとして観測可能であると考えた.そしてこれら2個に関するすべての履歴を完璧に取得するモデルを「Extreme Life Logger」とした.さらに取得できるデータを,過去の行動履歴を示すデータと,「前駆行動」と呼ばれる将来の行動への意思を示すデータに分類した. (3)交通行動データの量および質と交通システムのパフォーマンス向上の関係の分析では,(2)を前提として(1)の交通システムのパフォーマンス向上の手法を検討した.これについては平成25年度は(2)による利用者数予測の統計学的モデルの構築から着手を始めたところである.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度に予定していた(1)一般的な交通システムを記述する数理モデル「交通システムモデル」の定式化,(2)交通行動データの収集行為を記述する数理モデル「データ収集モデル」の定式化,(3)交通行動データの量および質と交通システムのパフォーマンス向上の関係の分析の着手のすべてについて順調に進行しており,これらの成果を活用して予定通り平成26年度の研究に着手できる状況にある.
|
今後の研究の推進方策 |
平成25年度の(3)について継続して行うほか,(4)公衆が求める匿名性に関する調査と匿名性の概念の定式化,(5)匿名化に関する情報分野での既存技術の調査,(6)交通行動データの匿名性を確保しつつ有用性を高めるデータ収集と集計の方法の提案 を行う予定である.これらについては平成26年度の研究実施計画通りに実施する予定である.(4)(5)については予備的な調査により,情報科学の分野でかなり詳細な知見があり,なおかつ昨今の「ビッグデータ」の概念の流行に伴い,法制度の整備に関する議論も進んでいることがわかってきている.これらについては残り1年の研究期間内であっても大きく進展することが予想されるため,特に注意して調査および定式化を行う予定である.
|
次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度研究を実施中におきた,昨今のビッグデータ技術の急速な発展の状況を鑑み,平成26年度に計画している調査(匿名化技術等に関する調査),およびこれに関連して交通データ活用事例に関する調査に対して経費を重点的に配分したほうが最終的な研究成果の質を向上することに資すると思われる状況であると研究実施中に判断し,そうなるように使用額の調整を行った. 使用目的は当初研究計画と変わらず,主に,匿名化技術や交通ビッグデータの活用事例に関する調査にかかわる経費(旅費,文献整理に関する人件費など),研究分担者間の打ち合わせ旅費,そのほか調査結果や研究成果の整理やモデルの数値計算に使用するコンピュータ関連の消耗品,成果発表の際の英文校閲費,などである.このうち,理由欄に記したように,調査に関わる経費については当初計画よりも多く使用することを計画している.
|