【研究の目的】美術館や博物館は、社会の文化インフラとして期待されながら、現状は「無駄な箱モノ」の代表とされることが多い。本研究は、「美術館キュレーターズTV(CTV)と称する動画コンテンツのインターネット配信に着目して、既存の美術館等の資産を文化インフラとして有効活用するための方法論を明らかにしていく。2種の受益者:1)CTVコンテンツ聴取者、2)実空間におけるエリア(美術館等の周辺住民コミュニティ)の両面から、CTVの効果を調査・分析し、文化インフラ機能拡充能力を発揮するための方法論――CTVコンテンツのあり方、ならびにその活用方法――を明らかにすることを目的とする。芸術学分野とインフラ計画分野の研究者が連携して、実践的に研究を進めていくことを特色としている。 【研究計画・成果】昨年度に準備した高解像度動画コンテンツとWebアンケートシステムを用いて、まず今年度当初にはCTVコンテンツのあり方に重点を置いた調査・分析を行った。その結果を踏まえて(仮説検証を兼ねて)今年度下期には、動画コンテンツを新規に作成して、東京、大阪居住者を対象とするWebアンケート調査を実施した。この調査で用いた動画コンテンツは博物館所在地の歴史をテーマとして作成した。そのことで、CTV視聴者へのインパクトを2側面、すなわちコンテンツ素材である博物資料や美術品に対する関心の喚起(上記1)CTVコンテンツ聴取者にとっての便益)と、コンテンツが表現する地域への心的近接性向上(上記2)実空間におけるエリアにとっての便益)を区分した調査・分析が可能となった。未だケースが少ないため限界はあるものの、CTVコンテンツの有用性、活用方法の指針について成果を得ることができた。
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