メタン発酵法は、嫌気性の細菌および古細菌によって担われており、加水分解反応、酸生成反応、共生酢酸生成反応、メタン生成反応といった多段階反応を経て、有機物をメタンへ転換する方法である。実規模のメタン発酵施設は世界中で稼動しており、その歴史は100年以上にわたるが、依然として中間生成物であるプロピオン酸に代表される揮発性脂肪酸の蓄積による処理性能低下が指摘され続けておりその解決策は見出されておらず、嫌気性細菌のみに依存した従来法による性能向上は限界に達している。一方バイオエタノールの分野ではでんぷんやセルロースの分解で得られるグルコース等が原料とされている。嫌気性細菌と比較して酵母の代謝産物はエタノールであり反応速度が高い利点がある。メタン菌は酢酸、水素、蟻酸、メタノールといった極めて限定された基質のみ利用できるとされていたが、近年エタノールを直接利用できる新種が報告されている。本研究は、エタノールを利用可能なメタン生成古細菌とエタノールを生成する酵母を人工的に共生させることで、主な中間生成物であり、阻害をもたらすことが知られている酢酸生成細菌と水素資化性メタン生成古細菌の共生によって分解可能とされている揮発性脂肪酸を経由せず、エタノールを中間生成物とするメタン発酵法について検討を行ったものである。実験に使用した酵母とメタン生成古細菌はカルチャーコレクションから入手した株を用いて25℃および35℃でグルコースを炭素源として共培養を行った。エタノール発酵を先行して行った後、メタン生成古細菌との共培養を行う2ステップ回分培養において、25℃と比較して35℃におけるメタン生成速度が高いことが示され、その主な要因は酵母によるエタノール生成反応ではなくメタン生成古細菌によるメタン生成反応であると考えられた。25℃および35℃においてメタン生成ポテンシャルに大きな違いはなかった。
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