研究課題/領域番号 |
25630225
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 北九州市立大学 |
研究代表者 |
安井 英斉 北九州市立大学, 国際環境工学部, 教授 (70515329)
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研究分担者 |
寺嶋 光春 北九州市立大学, 国際環境工学部, 講師 (60706969)
加藤 尊秋 北九州市立大学, 国際環境工学部, 准教授 (20293079)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | メタン発酵 / 植物バイオマス / 塩の阻害 / 酸生成 / 数学モデル / リグニン / シミュレーション / 生物分解 |
研究概要 |
粉砕したギニアグラスに食塩を添加した試料(158 g-COD/kg-wet biomass, 70g-NaCl/kg-wet biomass)を模擬好塩性植物バイオマスとした中温条件(35度)の連続実験結果を再現できる数学モデルを作成した。これは国際水協会(IWA)の嫌気性消化モデルNo.1 (ADM1)をベースとしたもので、液中に観察される溶解性リグニン、低分子の炭水化物、プロピオン酸と酢酸の濃度も計算可能である。シミュレーションによれば酸生成細菌の比活性が通常のADM1よりも著しく低くなり、これによって溶解性炭水化物が多量に残存する結果が得られた。この現象は高濃度の食塩による酸生成細菌の阻害と考えられたため、この確認として水で希釈した反応液を用いた活性汚泥による分解試験を実施した。シミュレーションで予想されたとおり、いったん希釈した液では直ちに有機物が分解された。塩によって酸生成細菌が強く阻害される現象は今まで知られていなかったことである。これらのことから、好塩性植物バイオマスのメタン発酵においては、多少の水で原料を希釈する必要があると考えられた。 また、複雑な構造を有するリグニンを簡易に定量できる手法は今まで報告されていなかったため、この開発も併せて進めた。蛋白質の定量分析に使われるLowry法のフェノール試薬を用いると、リグニンのフェノール骨格が短時間で強く発色することが確認できた。この手順はたいへん簡単なので、植物バイオマスの生物処理において反応度合いをモニターするためのツールとして役に立つ。市販の溶解性リグニンを標準物質とすることで、リグニン以外の成分(炭水化物、蛋白質、脂肪酸)と合わせたCODの物質収支も高い精度で検討できるようであった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
組成が複雑な植物バイオマスについて、メタン発酵プロセスを念頭においた各成分の分解反応を数学モデルと化学分析の両面から説明できるようにしたとともに、好塩性植物のメタン発酵反応を律速する段階が酸生成にあることを見いだした。
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今後の研究の推進方策 |
NaClを体内に取り込む好塩性植物の分解実験に加えて、Na2SO4の好塩性植物も検討を進める。これによってメタン発酵におよぼす塩の影響や開発システムの適用性を広く評価する。特にNa2SO4の好塩性植物を対象にする場合、硫酸塩還元反応も進むため、硫化物の阻害を引き下げるための運転条件も検討していく必要がある。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初予定していたウズベキスタンの現地調査が当地の研究協力者の都合で延期となったため 9月頃に現地出張を予定しており、乖離部分は今年度に消費される見込み
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