研究課題/領域番号 |
25630228
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
西脇 智哉 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (60400529)
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研究分担者 |
菊田 貴恒 日本工業大学, 工学部, 助教 (20599055)
桐越 一紀 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 技術専門職員 (60240660)
石山 智 秋田県立大学, システム科学技術学部, 助教 (80315647)
崔 希燮 北見工業大学, 工学部, 助教 (70710028)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | リユース / 繊維補強セメント系複合材料(FRCC) / メーソンリー / LCC / 減築 |
研究実績の概要 |
平成26年度には、UHP-FRCCブロックの設計と、この結果に基づいたブロック試作および載荷試験を行った。また、環境評価として日本建築学会のLCA指針に基づいて、LCCO2解析などを行った。 FRCCブロックについては、壁式構造の採用と単純な形状を維持したまま平面に展開できることを念頭に、施工性や従来のブロック造で用いられる断面積を併せて考慮して決定した。幅210mm×高さ210mm×厚さ190mmの十字形状を基本形とし、これにインターロッキング部を設けて応力伝達を行う形状を採用した。インターロッキング部分の応力集中を回避できる形状を、FEM解析により選定し、実際にUHP-FRCCを用いてブロックを複数個作製することができた。この際には、3次元プリンタによりブロック形状を出力した後、これを型材として型枠を作製、これを用いてUHP-FRCCを打設して目的のブロックを得た。併せて作製した補助ブロックを用いて組積体を構成し、これに対して圧縮試験ならびにせん断試験を行って、基礎的な力学性能を確認した。また、この組積体のFEM解析も行った。その結果、提案するUHP-FRCCブロック組積体の組積係数は通常のモルタル組積と比較して大きく、材料特性を十分に発揮することが期待できることを確認した。 環境評価についてはシミュレーションを行い、これに当たっては改築ごとに国内の人口動態予測に沿って床面積の削減を行い、ブロック要素はそのままリユース可能である条件とした。この場合、建設当初の排出CO2量は従来構法と比較して増大するものの、LCCO2では築後50から70年で有利側に移行することを確認した。100年の供用期間を想定した場合は排出量でも7%~19%の削減効果が得られることを確認した。加えて、提案モデルでは20年程度の比較的短周期に改築を繰り返した場合でも環境負荷を大きく抑制できる可能性を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究開始当初に想定していた平成26年度の研究課題としては、[1]UHP-FRCCブロックの形状設計と、これに基づいた載荷試験およびFEM解析と、[2]社会情勢の変化を織り込んだ形での環境側面からの評価の実施の2項目に大別できる。研究実績の概要にも記載の通り、前者については、FEM解析を中心としてのUHP-FRCCブロックの基本形状を決定することができた。また、作製したUHP-FRCCブロックを用いて組積体を構成し、圧縮試験とせん断試験によって基礎的な力学特性の評価を行うことができた。この際には、並行して行ったFEM解析の結果と、実際に生じたひび割れ形状などから、より合理的なブロック形状や組積方法を検討するためのフィードバックを行う予定である。 後者については、最も影響が大きく、かつ、避けることのできない社会情勢の変化である、我が国における人口減少を織り込んだ形でのLCA評価を実施した。各原材料や作業工程などのインベントリデータを調査・整備し、LCCO2などを算定して定量的な評価を行うことができたものと考えている。ただし、たとえば2次部材のリユース状況や、これを実現するための納りを含めた検討については、仮定を積み重ねた状況も残っているため、これらは次年度の課題としたい。 これらの状況から、現在までの達成度は概ね予定通りと判断している。
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今後の研究の推進方策 |
研究期間の最終年度となる平成27年度は、基本的には平成26年度までに得られた知見を元に、更なる試行錯誤と各要素技術のブラッシュアップを引き続き行う。これまでに得た組積体としての基礎物性やひび割れの発生状況などの観察結果と、この載荷試験をモデル化したFEM解析の結果を吟味し、ブロック形状の改善に引き続き取り組む。また、組積体を拡張した形での載荷試験についても実施を検討するとともに、載荷もしくは変形のレベルを予め想定したうえで、メーソンリー構造の解体・再構成についても実現可能性を確認する予定である。環境側面からの評価については、平成26年度までに行ったLCCO2ならびにLCR、LCWなどの結果の精査と、高精度化に取り組む。特に、非構造部材についても可能な限り評価に含められるようなモデルを構築することを目指す。また、非構造部材のリユースを実現するための、乾式のみによる接合部の形状についても検討を引き続き行う。 最終年度であるため、これに当たっての報告書を作成する。
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次年度使用額が生じた理由 |
計画当初に使用を予定していたFEM解析ソフトを変更し、これにかかる使用料の大幅な削減が可能となったため。
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次年度使用額の使用計画 |
当初はFEM解析ソフトの使用料として算定していた部分が削減されたため、実験検討に対して予算を振り向けて使用したい。このことにより、計画当初は実現を見送る予定であった回数や規模の実験が可能になるものと考えられる。
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