多自由度原モデルの時刻歴応答解析における計算負荷の低減のために少自由度の縮約モデルを用い,さらに精度向上のために縮約モデルに作用させる時刻歴外力を調整する手法を提案した. (1) 地震動入力時の運動方程式右辺の地動加速度による慣性力を各自由度に作用する外力と見なし,「地動慣性力」と呼ぶ.原モデルと縮約モデルの応答の等価性条件を満足するように,縮約モデルに作用させる地動慣性力を変換し,得られた「変換地動慣性力」を時刻歴外力として縮約モデルに作用させ時刻歴応答解析を行う方法を展開した. (2) 提案手法は振動数領域における変位応答の等価性条件に基づき振動数領域の変換地動慣性力を生成し,その逆フーリエ変換により時間領域の変換地動慣性力を生成する.この操作は原モデルと縮約モデルの伝達特性の差を地動慣性力に反映させることに相当する.振動数領域の定式化により,変換地動慣性力を用いれば,原モデルにおいて縮約モデルと対応する自由度の変位,速度,加速度の等価性が理論的に保証されることを示した. (3) 本手法をダンパー最適配置法における感度計算の繰り返しや,免制振装置の物理特性の変動を考慮したばらつき解析に利用する場合を想定し,構造モデルの剛性や減衰の変動による変換地動慣性力の変動を,テイラー展開を用いて少ない計算負荷で求める手法を提案した. (4) 本提案手法は振動数領域の応答の等価性を用いるため,理論的に応答の等価性が保証されるのは線形モデルに対してのみである.しかしながら,本提案手法は時刻歴荷重を生成するため,非線形問題にも近似的に利用することができる.非線形のリリーフ機構付きオイルダンパーを設置したモデルに対して本手法を適用し,縮約モデルを用いて原モデルの対応自由度の時刻歴応答を精度良く評価できることを明らかにした.さらに、非線形応答を示す構造物モデルを振動台上に設置し、提案手法の精度検証を行った。
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