建築環境における温熱快適性予測の信頼性を向上させるため、着衣と皮膚との間に形成される空気層(以降、着衣内空気層と呼ぶ)における換気を十分な精度で再現するモデルを提案し、日常生活の多様な状況に対して簡易に予測できる体系を構築することを目的とする。換気性状の把握には、数値流体力学(詳細モデル)を用い、これを換気力学を用いた簡易モデルで精度よく表現することを試みる。 平成27年度においては、「着衣-人体非定常熱水分収支モデル」に換気計算モデルを組み込み、温度差および風圧による効果を考慮して体温調節反応を予測するためのプログラムを作成した。風圧係数については、平成26年度の研究で得られている計算値(数値流体解析による)を用いている。また、このモデルを用いて、温度変化が着衣内空気層における換気量に及ぼす影響を評価し、温度差換気量の変動の影響は小さいことを示した。一方、着衣内空気層の実形状を考慮した数値流体解析により、着衣内空気層の熱抵抗の分布を計算し、部位ごとの熱抵抗値とその部位の着衣内空気層の厚さの相関を検討したところ、一般的な密閉空気層の熱抵抗と空気層厚さの関係に準じて着衣内空気層の熱抵抗を説明する可能性があることが示された。さらに、人体周辺の風速を変化させた場合にも、着衣内空気層の厚さと熱抵抗の相関関係が見られること、ある程度、風速が大きくなると、空気層内部の熱抵抗値にも影響が及ぶことが確認された。
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