研究課題/領域番号 |
25630240
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 秋田県立大学 |
研究代表者 |
浅野 耕一 秋田県立大学, システム科学技術学部, 准教授 (70336444)
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研究分担者 |
菅野 秀人 秋田県立大学, システム科学技術学部, 准教授 (20336449)
長谷川 兼一 秋田県立大学, システム科学技術学部, 教授 (50293494)
村田 涼 東京工業大学, 理工学研究科, 准教授 (50573119)
宮岡 大 日本大学, 工学部, 助教 (80611954)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ライフサイクルアセスメント / ライフサイクルコスト / フルコスト評価 / 評価対象範囲 / エネルギー消費量 / 入力操作画面 |
研究概要 |
評価対象とすべき環境影響領域の範囲(評価対象範囲)を検討し、設定した。保護対象へのインパクトの構成要素となるカテゴリエンドポイントは、建物と敷地による環境への直接的影響が大きいものに限定した。LIME2の評価対象範囲を用いて被害額を算出し、その結果を分析することで、検討した評価対象範囲の有効性を検討した。クライアントが実際に自分で支払う費用(内部費用)と、環境や健康が受ける被害に係る費用(外部費用)の両方を含めたフルコスト評価を行った。その結果、特に運用段階では、被害額が無視できない比率になることを明らかにした。 運用時のエネルギー消費量の計算方法を検討した。基礎情報を得るため、全国を対象としたエネルギー消費量の本調査を行った。調査対象都市は、都市構造の分類結果から無作為抽出した。推定式の説明変数とする項目について検討し、平成11年の省エネ基準の気候区分、エネルギー消費量と家族人数などの居住者自身の情報や、人口分類などの情報を整備し、分析を行なった。冷房と暖房のエネルギー消費量は省エネ機器の有無と、給湯と照明・家電等のエネルギー消費量は家族人数との相関が高いこと等を明らかにした。 ツールが有すべき、入力項目の基本構成について、検討を行なった。入力項目の決定しやすさを把握するため、クライアントの立場に近い人たちを対象に意識調査を行なった。その結果、与条件は概ねクライアント自身が回答できる「単独選択項目」となり、希望条件の設備などの住宅の一部分に関する項目は「対話選択項目」、耐震性能等の住宅全体の性能に関する項目が「間接選択項目」となることを明らかにした。計算条件の相互矛盾によるエラーを防ぐ為、矛盾チェックの機能を提案し、基本設定を検討した。専門知識のないクライアントが入力操作を行いやすくなることを意識した、具体的な操作画面(ペーパープロトタイプ)を試作した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
【各段階におけるインベントリ推計機能】被害算定型のLCAツールとするため 、ホルムアルデヒド、熱負荷、地震動を加えた評価対象に加えた。歩行空間段差の追加は現在検討中であるが、それ以外の、建物が居住者に直接影響を及ぼす要素は網羅されている。 【カテゴリエンドポイント計算機能】各インベントリに対応したカテゴリエンドポイントの計算機能を作成した。具体的には、カーボンオフセット費用、シックハウス症候群、家具類転倒、建物の被災を対象とした。被害規模の換算と統合の手法はWHOのDALY(Disability-adjusted life-years:障害調整生命年)に準じた。熱中症と脳卒中については、暫定的に熱ストレスと寒冷ストレスの被害算定方法に替えてある。転倒・転落の被害、呼吸器系疾患、酸素欠乏症については、現在検討段階である。 【運用段階でのエネルギー消費量の統計的推定方法】住宅の諸元が不明確な場合に、各種統計情報からの推定値を適用する機能を追加した。説明変数には住宅の床面積・家族人数・年収・気象条件を適用した。推定方法の検証用に全国を対象としたアンケート調査を行った。省エネルギー基準の地域区分(全6地域のうちIV・V地域を一括して扱うことによる5地域)が異なる都市を対象とした。推定精度をより高くするため、追加のアンケート調査を計画中である。 【個人の住宅運営上の意思決定に対する有効性の検討】複数の建築設計事務所の協力を得て、クライアントとの設計協議での有用性を検討した。まだツールの動作安定性を向上させる途中であり、ツールの運用を通した評価は今後に計画している。そこで、クライアントの立場に近い人たちを対象に、設計初期段階の意思決定において、どのような項目を検討対象としたいか意識調査を行なった。その結果より、当該ツールの有効性を確認した。
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今後の研究の推進方策 |
【運用段階でのエネルギー消費量推定方法の改良】運用時のエネルギー消費量の推定方法の検討の為の追加調査を行う。具体的には、調理機器の使用状況などの住まい方に関する調査を検討中である。また、地域性の分析に関して、同じ都市内のDID地区と郊外部でのエネルギー消費量の比較分析が不十分であるため、今後取り組んでいく。 【個人の住宅運営上の意思決定に対する有効性の追加調査】開発したツールの有効性について、実際にユーザーとなるクライアントと設計者を対象とした追加調査を行う。当該ツールを活用した場合と活用しなかった場合とで、クライアントがイニシャルコストを増やしてでも長寿命の健康住宅を選択したいと考えるか否かを有効性の指標として調査する。 【各段階における内部費用推計機能】住宅ライフサイクルの各段階(資源採取→部材加工→建設→運用→更新/改修→解体→廃棄)における内部費用(直接的にかかった費用)を推計する機能を作成する。積み上げ式を基本とし、製造工程は産業連関分析法も行えるようにする。従来の建築LCAには無かった各種改修費用について分担し(断熱改修、健康住宅改修:長谷川・浅野、耐震改修:菅野、バリアフリー改修:浅野、パッシブ改修:村田)、研究協力者の助言を得ながら実装する。 【環境・生活・経済のトリプルバランス評価機能】まず、産業技術総合研究所のLIMEより、廃棄物・土地利用・石油・天然ガス・木材のインベントリとカテゴリエンドポイント算定モデルを部分的に引用して組み込む。これにより生物多様性保護に関する被害の算定が行えるので、環境負荷・生活負荷・経済負荷のトリプルバランスを検討することが可能となる。そこで、計算対象とする住宅の各種パラメータを自動的に変動させ、三者のパレート最適解を算出できる機能を開発する。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究分担者が集まって研究会議を行うにあたり、テレビ会議で置き換える機会が多かったため、旅費に予定していた予算が余り、次年度に使用することとなった。 研究分担者が秋田ないしは東京で集まって研究会議を行うための旅費、及び、学会大会等の研究発表のための旅費として、使用する計画である。
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