長年続いていた建設投資の縮小により震災前までは極めて厳しい業況に直面し、震災後は一転して好況感の高い業種となった地域建設業について、復興過程における業界動向と役割並びに今後の地域産業としてのあり方を検討した。特に、東日本大震災は津波被災地を中心に壊滅的な(物的)被害をもたらしたが、膨大な復旧・復興事業への一時的対応にとどまらず、業界としてはこの期を「資本蓄積及び将来的な技能継承・高度化、構造改革」の契機と捉え、地域における社会的ニーズに応えるという立場も含め、「住民支援型コミュニティ・ビジネス」への転換可能性を探るという視点を重視した。 以上の問題意識から既存の公表データの収集分析をまず行い、建設投資や建設雇用の経年的変化等を再確認し、地域建設業の課題を整理した。加えて、個別建設業者の経営審査データを購入し、企業ヒヤリングと合わせて分析を行った。 次に、東北大学経済学研究科で行っている震災復興企業実態パネル調査(2012~14年度)のデータセットから建設業分を抽出し、その構造分析を通じて東日本大震災の影響を把握した。 最後に、専門家との勉強会及び関連諸アクターへの聞き取り調査を行い、それぞれの立場からの震災復興及び地域建設業の展望に関する情報収集を進めた。聞き取り対象は、1.行政:東北地方整備局・相馬市等市町、2.業界団体:各県建設業協会・みやぎ建設総合センター・岩手県建設業あり方研究会、3.企業:ゼネコン/中堅ゼネコン・都市再生機構・東北大インフラマネジメント研究センター・建設経済研究所。 この萌芽的研究を通じて、今後のこの分野で精査すべき課題の特定化を行い、主要な内容は学会報告及び論文としてまとめた。特に最終年度は、米国地理学会大会にて、その成果の一部を報告した。
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