研究課題/領域番号 |
25630250
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 工学院大学 |
研究代表者 |
山下 哲郎 工学院大学, 公私立大学の部局等, 教授 (00239972)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 病院 / 外来部門 / シミュレーション |
研究概要 |
外来診療のシステムや手順が変化する中で,本研究は,1)患者の「動線」や「待ち」を予測する,簡便に利用可能な,新たなシミュレーションモデルを作成するものである。具体的には,2)電子カルテやオーダリングシステムのデータを元に,汎用性のあるフローチャートを作成し,到着時間分布や分岐確率を収録し,またそのシミュレーション結果を実態調査に基づき検証することが,本研究の目的である。このモデルの作成により,3)設計の進度に応じた,各段階での計画案の是非・得失を逐次実証的に検討し得ることになり,実務分野での意義は大きい。 こうした目的の下で,平成25年度は,調査の順序は対象病院の都合などに応じて決定する予定ではあったが,まず足利赤十字病院(栃木県足利市)を対象に,1)来院時刻分布,2)各々の分岐点の分岐割合,3)各々の行為時間分布,についてデータの収集と検討を行った。現在,これらのデータを元にしてArena(ソフト名)によるシミュレーションを行なっており,1)待合の時刻別人数分布,2)離院時刻分布,3)診療科毎の所要時間の比較,により,モデルの良否を検討している。また同時に,横浜南共済病院で一昨年度に収録したデータも用いて比較検討を行っており,その成果をまとめたところである。 しかし,これまでのプロセスおよび,結果の一部について,それぞれ海外論文,国内論文(両者とも査読有り)に投稿したが,いずれも不採用に終わっており,実際の設計場面への応用に向けたアウトプットの示し方などについて,再検討を行っている。 ただ,審査評に依れば,一部査読者の理解不足の面も読み取れるので,論文化に当たっては,こうした点にも留意する必要があると総括している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初,調査対象施設として,1)横浜南共済病院(神奈川県横浜市),2)中頭病院(沖縄県うるま市)も挙げていたが,いずれも工事費高騰の煽りを受け,工事着工・竣工が遅れ,そのため院内の患者動線が非定常状態となっている。今年度は,調査対象医療施設を再度検討し直し,調整を行った上で変更を検討する。 研究の途中であるが,本研究の成果を一部査読論文に投稿したが,不採用となったこともあり,検討のプロセスや分析の視点などについて,再度精査を行っていることにより,若干の遅れが生じている。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画通り,残る3施設程度について調査を行い,データの蓄積を図る。 また,本研究の骨格を再評価するために,素読論文に投稿し,客観的な視点からの評価を確認することとし,実際の設計過程において,実際にシミュレーションモデルを適用することで,評価を行いたい。 具体的には,また、その設計過程で浮沈した部門配置計画の別案の是非も本シミュレーションモデルを適用して検証を行い、最終的な計画案の妥当性を明らかにしたい。さらに近年コスト削減の観点から計画されることが非常に多い「地下なし病院」における部門配置計画(1階が検査部門、2階が外来など)へのシミュレーションモデルの適用、あるいは敷地制約の厳しい都市型病院のおける積層型の部門配置計画へのシミュレーションモデルの適用、さらなる実験的な試みとしての前方に検査部門、後方に外来部門という従来とは真逆な部門配置計画の可能性をシミュレーションモデルの適用で検証を行いたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初計画に従って使用した結果,それぞれの物品について予定価格と実際の価格に差が生じたため発生した差額である。 なお,使用予定額については,他の費用を充てて研究を遂行しているので,残額という訳ではない。 今年度使用予定の配分額と併せ,当初の予定に従って使用する計画である。
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