研究課題/領域番号 |
25630251
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
鹿田 光一 東海大学, 熊本教養教育センター, 准教授 (50243902)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 内水氾濫 |
研究概要 |
短期集中豪雨に伴う都市型水害である内水氾濫については、都市中心市街地を対象にした研究は進んでいるものの、住居エリアについては進展していない。特に農業用水路が長年に亘って増設・延長を繰り返してきた住居エリアにおいては、地域全体の排水能力、浸水被害メカニズムを捉えることが極めて困難な状況にある。 この為、約5平方キロメートルに及び、農業用地が混在する住居エリアを対象に、1)内水氾濫の状況、すなわち浸水箇所、規模を特定することを試みた。内水氾濫現象は、近年発生頻度が増加傾向にある集中豪雨により短時間に発生し、数時間~1日程度で終息する現象である。この現象のタイムスケール的特徴の為、人工衛星画像・航空写真測量などを利用した状況把握は困難である。この為、同エリアを20区画に分割し、現地において各区画の住民の方への聞き取り調査を行った。この結果、同エリアに多数存在する水路においても、住民の日常生活に支障が生じる浸水被害は、特定系列の水路に起因していること、および、ある貯水池(民間所有)の排水管理が十分で無い為、その周辺における被害を拡大していることなど対象エリア全域における面的な被害の状況を特定することが出来た。 上記調査と並行して、平成25年度研究計画に記述の「簡易水位観測装置」の試作を試みた。夏期を中心にしたフィールドへの設置を想定し、温度変化に影響を受け難い高品質アクリルと特殊加工したウレタンスポンジ・フロートからなる装置の開発に成功、室内実験においても必要な精度での水位計測が可能な機能を確認した。この後、研究計画通り、水位簡易計測装置の仕様を業者と打ち合わせ、予定数量発注を控えた段階に至っている。 次の段階として、観測計画の企画書を作成の上、対象の農業用水路の自治体管理部局と協議を続けているが、「法定外公共物管理条例」を主な理由として、未だに設置許可が得られていない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
内水氾濫の状況把握、すなわち浸水箇所、規模を特定することの試みについては、調査対象エリアを区画分割し、現地において各区画の住民の方への聞き取り調査を行い、浸水箇所の特定、およびエリア特有の浸水現象傾向の特定に至っている。 また、聞き取り調査結果を検証するための簡易水位観測については、装置の開発に成功、室内実験において必要な精度での水位計測機能を確認済みである。 しかしながら、浸水現象を引き起こしている農業用水路の自治体管理部局に対して、観測計画に関する企画書を作成の上、観測計画の説明、観測装置の水路への設置について協議を続けているが、自治体の「法定外公共物管理条例」に基づき、観測装置の設置が「(法定外公共物である)水路の保全または利用に支障を及ぼす恐れのある行為」との自治体管理部署の見解から設置許可が得られていない。 この為、25年度研究計画とした「簡易水位観測装置の設置」が行われておらず、得られたデータによる「内水氾濫ハザードマップの作成」も行われていない。 しかしながら、平成26年度研究計画に予定していた「ネットワーク解析ソフトウェアを利用した水路網解析」を先行して進めるべく、ソフトウェア自体の基本機能を確認し、平成25年度予算を利用し、応用ソフトウェア(応用解析用関数を多数装備)を購入済みであり、地形解析などへの適用に着手している。
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今後の研究の推進方策 |
実測水位データが全くない状況(自治体においても過去に計測された記録もない)ではあるが、「研究実績の状況」で述べた“住民の方への聞き取り調査結果”の精度を向上させることが当面の研究期間において進めることの出来る現実的なデータ収集活動であると考えられる。 この為、現地での聞き取り調査の精度向上を試みたい。具体的には、昨年度の調査においては、個別の聞き取り調査シートを提示し、他の住民の方の回答が対象者の記憶に影響しない様(歪めてしまわない様)、聞き取り調査を実施したが、今年度は、調査精度を向上させる為、個別の聞き取りシートによる調査件数を増加させることと並行して、聞き取ったデータを現地において逐次ノートPC上に反映させ、その視覚的表示(地図的表示)を提示、過去の集計データ(他の住民の方への聞き取り内容集計)への意見・コメントなども合わせて収集すること(当然、意識の食い違いも、確実に記録する)により、精度向上を図ることを計画している。 この聞取り調査と「ネットワーク解析ソフトウェアを利用した水路網解析」に使用を予定していた応用ソフトウェア(応用解析用関数装備)を用いて、新たに内水氾濫現象のシミュレーションを行うことを計画している。 住民の方からの聞取り結果と得られた浸水シミュレーションとの比較検討を行い、本研究課題において計画している水位観測の必要性とその方法について改めて自治体管理部局と協議を行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究計画における「簡易水位観測装置(開発・試作・精度検証済み)」設置予定数量作成費用、及びそのデータ収集の為の「研究補助・データ収集」の為の人件費・謝金、得られたデータによる成果発表の為の旅費を予定通りには使用出来ていない。 しかしながら、平成26年度研究計画に予定していた「ネットワーク解析ソフトウェアを利用した水路網解析」を先行して進めるべく、基本機能を確認し、平成25年度予算を利用し、応用ソフトウェア(応用解析用関数装備)の購入を行った。 予算による購入物品が予定とは異なった(平成26年度予定のものを先行購入)為、差額が生じた。 自治体の条例への解釈に変更がない限り、水路への観測装置の設置が困難であることも想定している。この為、観測装置を設置することによって農業用水路の断面欠損を与えることの無い観測装置として、インターバル撮影が可能なビデオカメラを利用した、オリジナル水位流速観測装置の開発を進めている。 現状試作中の段階ではあるが、設置の為の使用施設を水路から水路脇ガードレールに変更することにより、現状見解の相違を生じている「観測装置による水路断面欠損」を回避することが出来る。さらに、この観測体制のコンセプトについては、自治体の管理部局も比較的柔軟な理解を示しており実現可能性が高く、新しい水位観測システムの作成費用へ平成26年度予算を含め使用予定である。
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