研究課題/領域番号 |
25630251
|
研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
鹿田 光一 東海大学, 熊本教養教育センター, 准教授 (50243902)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 内水氾濫現象 / 地理情報システム / 無人航空機(ドローン) |
研究実績の概要 |
強度集中豪雨時におけるエリア的排水能力不足に起因する浸水現象:内水氾濫現象について研究を継続している。本現象は、突然に発生し、数時間程度で収束する短時間浸水現象であり、地域全体の排水能力、浸水発生雨量などを含むメカニズムが不明なままである。その為、広域浸水地域を区画に分割、各区画の住民への聞き取り調査を行い、助成金により購入を行ったソフトウェアによる地形解析を完了し、住民調査から得られた浸水被害箇所との整合性を確認した。しかしながら、直接観測用「簡易水位観測装置」は条例に抵触するとの理由から、また間接観測用インターバル撮影装置についても道路安全性を理由に設置許可は得られなかった。 この為、平成27年度においては、多数の観測器を配置する方式から、無人航空機(ドローン)による遠隔観測へと方針を変更した。この為、メーカー側との機器選定を行い、機器構成を検討後、発注、操縦訓練に係る調査出張を行った。しかし、無人飛行機の飛行ルールに関する航空法の規定により、住宅地での観測を行うための許可申請とその申請条件を満たすための操縦訓練時間が必要となり、年度内は観測に至っていない。 浸水シミュレーションについては、補助金購入ソフトウェア(地理情報システム)を用い、平成27年6月の集中豪雨に伴う内水氾濫について、エリア的排水能力不足量を算定する簡易連関モデルを提案した。即ち、1.浸水エリア周辺の集水域を特定する。2.事前調査により氾濫状況の概略を把握、発生可能性のある浸水分布・浸水深さをシミュレートし、近隣住民の方への聞き取り調査を行った。3.概算排水能力算定の為、聞き取り調査により得られた浸水分布をポリゴン化、浸水水深フィールド作成後時間降水量による内水氾濫発生の目安作成の為、概算排水能力を時間降水量相当量により表示した。適用結果は学会にて口頭発表を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
平成27年度は、無人航空機(ドローン)の導入検討の為、メーカー側との機器選定・操作方法を含む交渉・デモンストレーションの為の調査出張、納入後直ぐに、観測体制を整え、降雨後の水位変化を遠隔観測予定であったが、平成27年12月10日無人航空機による飛行ルールに関する航空法が規定された。既定の対象となる3つの空域、すなわち、(A)150m以上の上空、(B)空港等の周辺の上空空域、(C)人口集中地区の上空においては、国土交通省より許可・承認を得ることが必要となった。具体的には、平成22年国勢調査における人口集中地域、即ち、人口密度が1平方キロメートル当たり4,000人以上の基本単位区においては、許可・承認を得る必要が発生し、住宅地における内水氾濫現象を対象とする本課題についても、許可申請手続きが必要となった。さらに、飛行経歴(10時間以上)に裏打ちされた操縦技術が許可・承認条件であることに対し、ドローン本体へ搭載可能なバッテリーの飛行可能時間は最大12分程度であり、所有バッテリー全3本を用いても、安全重視の観点から1回の操縦訓練は概ね30分であることから、飛行経歴10時間の条件を満たす為には、20回の操縦訓練機会が必要となった。この為、無人航空機納入後は、飛行経歴と操縦技術の蓄積と、申請書面準備に費やされ、実際の観測には至っていない。
|
今後の研究の推進方策 |
平成27年度において整備を進めた、無人航空機(ドローン)を用いた内水氾濫現象遠隔観測について、国土交通省よりの許可・承認を取得し、その観測体制を整える。その後、降雨と内水氾濫現象の「インパクト&レスポンス」データ観測の為、決して、大規模な被害だけを対象とするのではなく、対象エリアへの降雨というインパクトに対する、内水氾濫であるレスポンス現象のデータ蓄積を行う。 同時に、平成27年度において対象地域に適用を試みた内水氾濫現象簡易連関モデルをマニュアル化、住民の方への聞き取り調査結果を主体としたステップ2へ無人航空機遠隔観測データを加味することによりその精度向上への準備を行う。 これら得られた観測結果・調査結果に基づき、地理情報システムソフトウェアを用いて、数度程度得られるであろう集中豪雨とそのレスポンスである内水氾濫の関係性を明確にし、エリア的排水能力(得られている算定結果)の検証と精度を向上させ、地域に浸水をもたらす不足排水量に対する解消方法の検討を行う。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当初の計画では、直接水位観測設備(または間接水位観測設備)を対象地域における水路・河川敷に設置し、水位データを蓄積しようとしたが、設備設置に係る監督官庁の許可が下りなかったため、急遽上空からの遠隔観測による広域データ収集を行う方式に変更した。その無人航空機の飛行ルールに関する航空法の規定、またそれへの該当のため、申請許可の必要性があらたに発生し、観測データの蓄積と分析、即ち、得られたデータを用いた浸水趣味レーションに至るまでに少なくとも1年はかかる為、補助金の次年度使用が発生している。
|
次年度使用額の使用計画 |
無人航空機による内水氾濫地域の遠隔観測の為、気象データ、特に風速の観測と記録が必要な為、データロガー内臓風速計の購入を行う。また、観測時における安全性確保の為、補助員確保の為の人件費を使用する予定である。 また得られた観測データに基づくシミュレーションの為、地理情報システムソフトウェアの技術相談対応を含む保守契約料を必要とする。 得られた結果を昨年同様、学会発表を行う予定であるため、その国内旅費への使用も予定している。
|