研究課題/領域番号 |
25630252
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
中山 誠健 日本大学, 工学部, 研究員 (30620819)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 触覚 / 視覚 / 知覚 / 感性 |
研究概要 |
ヒトが手で触れて知覚する物体の形や硬さの違いと感性への影響を定量的に示すと共に、その手法においても新たな開発を目指すことを目的とする本研究の第一段階として、研究計画に沿った以下の内容を遂行した。まず(1)脳機能計測装置(functional Near-infrared spectroscopy)fNIRSを利用した計測実験で必要不可欠な、被験者に違和感が少なく取り付けが簡易で確実に前頭極の賦活を計測できるプローブ装置の製作を行った。(2)脳血流の賦活状況をより明確に計測するために、これまで検討していた被験者が受動的に行う実験タスク形態ではなく、被験者が触覚情報や知覚、感性を比較したり連想する能動的なタスクの中から抽出する形態を計画し検証を繰り返した結果、その行為に対して安定した賦活状況を計測できる傾向を把握できた。(3)触れる物体の形や硬さの物理的な要因と知覚する形や硬さ、感性への影響を明確にできる形態サンプルの検証を繰り返し行った結果、計15種類の造形サンプルを選定した。具体的には、45mm四方に収まる立方体とその角を25パーセントずつ、角Rをつけた4タイプ(角R100パーセントで球体となる)の基本的な造形5種類を設定した。また、触覚で得られる硬さを計測するためにシリコーン素材を利用し、硬さの異なる3タイプである。(4)検証実験では、fNIRSを用いた脳血流の賦活計測による指標に加え、物理的な比較実験や表現実験を行った結果、視覚から得られる形の嗜好性と形と硬さを知覚できる触覚における嗜好性に誤差が生じる傾向や、形の違いにより物理的な硬さとは異なる硬さを知覚する傾向を示すことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
被験者実験において健常者のみならず先天盲や中途障害の視覚障害者を対象とするなど幅広く行う前に、研究遂行の基本的かつ重要な実験方法の精査等を着実に行い、脳機能計測に加え物理的な比較や表現実験に関する検証を追加して行うことは、今後のデータ解析やまとめ段階を見据えた際に必要であると考えた。また、研究計画にある北欧のデザイン研究所の視察においては、25年度の視察の成果として26年度に本格的な技術習得が実現する見込みであることなど、それらを鑑みた結果から上記の区分と自己評価した。
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今後の研究の推進方策 |
視覚情報から得られる空間やデザインの感性が定量的に明らかにされる一方、触覚特性の定量化や感性のメカニズム解明が課題であることから、本研究では、従来型のアンケート調査に拘らず、新たな計測原理を利用して物の形や硬さの知覚と感性の関係を明らかにし、その手法を確立することを目的としている。25年度から引き続き26年度も医療と工学が連携した最先端の計測機器を利用できる実施環境において研究体制を維持し、研究計画に沿って多角的な検証実験と解析を行う予定である。加えて北欧のデザイン研究所での技術習得実現でより充実した研究成果が得られるように調整し、目的の達成を目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究実施計画に沿った脳機能計測実験に加え、物理的な比較や表現実験を行ったことにより、物品費や人件費・謝金等が必要となる幅広い対象の被験者実験においては引き続き26年度に行う必要があり、それに関する研究費の使用計画も見直す必要があった。また、25年度のデザイン研究所視察においても先方との調整により、26年度に技術習得を実施する予定である。 25年度に追加して行った物理的な比較や表現実験の成果を踏まえて、研究実施計画に記載された範囲内で実験素材の新調や修正を加えたデータ収集とその解析を行うことで、触覚から得られる人間の知覚特性や感性への影響、視覚と触覚から得られる感性の誤差などが示せる予定である。さらにその成果を踏まえ、北欧のデザイン研究所において技術習得や新たな知見を得る事で、より充実した研究成果として示す予定である。
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