研究課題/領域番号 |
25630255
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
宗本 晋作 立命館大学, 理工学部, 准教授 (20581490)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 通り / 印象評価 / 空間要素 / 注視点計測 / 伝統的建造物保存地区 / 自己組織化マップ |
研究概要 |
2013年度は、京都市の4伝統的建造物保存地区(産寧坂、祇園新橋、嵯峨鳥居本、上賀茂)における『通り』のデータベースの整備を行った。これらの地区において、全方位カメラ(Lady Bug2)で撮影し、『通り』の映像データを獲得した。合わせて伝統的建造物の数や割合等を記録し、『通り』のデータベースを作成した。 次に人が「伝統的」と感じる『通り』に対して、注視点計測装置(アイマークレコーダー:EMR-8)を用いて、その『通り』の何を見て「伝統的」と感じているかを地区ごとに分析し、人が見ている空間要素を抽出し、伝統的建造物の要素を整理した。 また『通り』のデータベースの映像を用いて、『通り』に対する印象評価実験と注視点計測を行った。「伝統的である」と感じられる『通り』と「伝統的ではない」と感じられる『通り』に対する視線の停留点を比較し、『通り』の伝統的建造物の割合と配置の関係を把握した。上記を、通りの空間要素の構成の特徴と印象評価の結果を関係づけて予測する方法として以下のように纏める過程にある。 まず整理した空間要素を用いて、4地区における56視点から通りを記述した。記述した通りの空間要素の構成の特徴を自己組織化マップを用いて位置づける方法を考案し、「自己組織化マップによる空間要素の可視化分析を用いた京都市伝統的建造物保存地区の通りの分類法に関する研究」として「第8回歴史都市防災シンポジウム」の査読論文に投稿した(現在査読中)。 さらに上記方法と『通り』に対する印象評価実験を組み合わせ、「伝統的である」と感じられる『通り』と「伝統的ではない」と感じられる『通り』を予測する方法を考案し、「自己組織化マップによる空間要素の可視化分析を用いた通りの印象評価推定法に関する研究-京都市伝統的建造物保存地区を対象として-」として、日本建築学会計画系論文集に投稿する準備を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究は予定通り、京都市の4伝統的建造物保存地区(産寧坂、祇園新橋、嵯峨鳥居本、上賀茂)における『通り』のデータベースの整備を行い、人が「伝統的」と感じる『通り』に対して、注視点計測装置(アイマークレコーダー:EMR-8)を用いて、人が見ている伝統的建造物の空間要素を整理した。また『通り』のデータベースの映像を用いて、『通り』に対する印象評価実験と注視点計測を行い、『通り』の伝統的建造物の割合と配置の関係を把握し、進行している。 上記を実施していく中、研究計画の予定になかったが、実用化に向けて得られた知見をユーザーが使いやすい形式で纏める必要性を感じ、通りの空間要素の構成の特徴と印象評価の結果を関係づけて予測する方法の着想を得た。これまで「自己組織化マップによる空間要素の可視化分析を用いた京都市伝統的建造物保存地区の通りの分類法に関する研究」として「第8回歴史都市防災シンポジウム」の査読論文に投稿し、「自己組織化マップによる空間要素の可視化分析を用いた通りの印象評価推定法に関する研究-京都市伝統的建造物保存地区を対象として-」として日本建築学会計画系論文集への投稿を予定している。実用化に配慮し、知識を再利用する形式を2つの査読論文で纏める過程にあり、研究目的の達成度は、おおむね順調に進展していると云える。
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今後の研究の推進方策 |
2014年度は、まず現在投稿準備を行っている「伝統的である」と感じられる『通り』と「伝統的ではない」と感じられる『通り』を予測する方法に関する研究を「自己組織化マップによる空間要素の可視化分析を用いた通りの印象評価推定法に関する研究-京都市伝統的建造物保存地区を対象として-」を纏め、日本建築学会計画系論文集に投稿する。 次に注視特性に基づく『通り』の空間要素に対する色彩制限に関する研究を行う。2013年度に引き続き、『通り』のデータベースを用いて、既存の景観条例の色彩制限を満足する範囲で、眼球運動計測に基づいて抽出した『通り』の空間要素に着目し、これらの色彩を変化させた画像を用意する。人の視力に基づいて設定した視認距離ごとに、色彩を変化させた要素が注視されるかどうかを注視点計測装置(アイマークレコーダー:EMR-8)を用いて計測する。計測結果の分析より、注視特性に基づいてより具体的な色彩の制限を得る。これらを研究論文として纏める予定である。 また最後に、全体の研究成果の纏めとして、生理学に基づく伝統的建造物単体や伝統的建造物群に対するガイドラインを策定する。伝統的と感じる『通り』から抽出した空間要素とその色彩制限の知見を単体規定として、『通り』における伝統的建造物の割合や配置と印象の違いの知見を集団規定として統合し、建造物単体から伝統的建造物群までを一体に網羅した横断的かつ生理学的なエビデンスを根拠にしたガイドラインの策定を行うことを試みる。2013年度に「自己組織化マップによる空間要素の可視化分析を用いた通りの印象評価推定法」を考案したように、使いやすいインターフェイスを心掛け、最終は実用化に向けて、より効果的に行政指導に用いることのできる知識構築のあり方に配慮したいと考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
物品費については、実験データ用サーバーを整備する人手が間に合わず、分析用ソフトとパソコン等機材の購入を行わずに実験を行ったため。人件費・謝金については、分析を簡易にし、申請者と少数メンバーがデータ分析を行い、支出を抑えたため。その他については、投稿論文が現在査読中や準備中にあり、入稿料が未払いになっているため。 物品費については、本年度は注視点計測の分析実験を精力的に行うため、これまで撮影した映像データをすべてサーバーに整備するために、パソコンやハードディスク、分析ソフトD-Factoryの購入を予定通り行う。旅費は、研究発表と協力者の元立命館大学の教員が次年度より中央大学に異動したため、協働するための交通費として使用する。人件費・謝金は、注視点計測の分析実験を精力的に行うための人件費として使用する。その他は成果投稿料として使用する。
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