研究課題/領域番号 |
25630261
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
大沼 郁雄 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (20250714)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 状態図 / 相平衡 / 反強磁性 / 相分離 / 規則不規則変態 |
研究概要 |
Fe基やCo基などの強磁性合金において,磁気変態点に沿って強磁性相と常磁性相との相分離,所謂「Nishizawa Horn」が現れることがよく知られている.例えば,Co-Cr2元系合金では,強磁性・常磁性FCC相と強磁性・常磁性HCP相の2種類の相分離が生じ,磁気記録メディアに応用されている.反強磁性相についても同様の相分離が現れることが熱力学的に予測されるが,多くの反強磁性体ではそのネール点(TN)が低いために実験による検証はなされていない.金属間化合物のNiMn(L10)相は,TNが750℃(準安定)と予測されており,元素の拡散による相分離が十分生じ得る温度である.また,NiMnのMnをZnに置換した,NiMn-NiZn(L10)擬2元系では,Zn量の増加に伴い,TNが低下するために,反強磁性相分離が現れることが期待できる.本研究では,NiMn-NiZn(L10)擬2元系の反強磁性相分離に着目して,NiMn-NiZn合金の相平衡を調査した. Ni線材と粒状Znを石英管に封入し,電気炉で1150℃まで加熱し化学量論組成のNiZn合金を作製した.NiZn合金と高周波溶解により作製したNiMn合金を適量ずつ石英管に封入し,NiMn-NiZn擬2元系合金を作製した.VSMとDSCにより,試料のTN,L10/B2/A1変態温度を測定した.NiMn/NiZn拡散対を作製し,NiMn-NiZn(L10)擬2元系の反強磁性相分離の生起を確認した. TNの測定結果から,NiMn-NiZn擬2元系合金中のZn濃度の減少に伴い,TNが低下することが確認された.600℃,650℃および700℃で熱処理したNiMn/NiZn拡散対において,TNに沿った相分離を示唆する濃度ギャップが観察された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度は,共にFCTのL10規則構造を有するNiMnとNiZnとの擬2元系状態図,特にL10規則相が安定に存在する領域を確認し,Zn濃度の増加に伴うネール点(TN)の変化を定量的に評価することを目的として,NiMn-NiZn擬2元系合金の作製と変態温度の評価を実施した.Znの蒸気圧が高い点が高温での合金の作製の障害となるが,厚肉の石英管を用いた熱処理法により化学量論組成のNiZn合金の作製に成功した. NiMn-NiZn擬2元系合金のTNとL10/B2/A1変態温度の測定を順調に達成した後,NiMn/NiZn拡散対試料を作製して,600℃,650℃および700℃で熱処理した結果,熱力学的に予測されたNiMnリッチの反強磁性相とZn濃度が若干高い常磁性相の濃度ギャップが観察され,世界で初めてTNに沿った相分離の出現が示唆される実験結果を確認した.以上の結果から,本研究は,当初の計画以上に順調に進展していると判断している.
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今後の研究の推進方策 |
本年度は,(1)NiMn-NiZn擬2元系合金による相分離組織の確認,および,(2)NiMn-NiZn擬2元系状態図の熱力学解析を実施する.拡散対法により存在が示唆された反強磁性相分離濃度ギャップ近傍の合金組成と熱処理条件で,NiMn-NiZn擬2元系合金における相分離組織を作製し,その濃度ギャップを定量的に評価する.700℃以下の比較的低温での相分離となるため,通常の手法では相分離組織が得難いことが予想されるため,熱処理前の試料をコンバージミリングにより強加工して,低温領域における相分離の促進を図る.熱力学解析においては,L10規則相,B2規則相,反強磁性の磁気変態等,いずれも複雑な熱力学モデルにより自由エネルギーを記述する必要があるが,いずれも申請者が特異とする領域であり,十分達成しうると考えている.
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次年度の研究費の使用計画 |
実績報告書に示した通り,研究は順調に進んでいるが,多くの研究成果は昨年度後半に得られたものであるため,国際会議等での成果発表を今年度に実施する.そのため,昨年度分の外国出張旅費を今年度に繰り越したために,次年度使用額が生じている. 本年9月にチェコのブルノで開催されるTOFA2014および来年3月に米国オーランドで開催されるTMS2015の2つの国際会議に参加・発表(各2名)するための旅費(登録料を含む)として計上する1,500,000円の一部に支弁する.
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