Fe基やCo基などの強磁性合金のキュリー点(TC)に沿って現れる強磁性相と常磁性相との相分離と同様に,反強磁性合金のネール点(TN)に沿って反強磁性相と常磁性相との相分離が現れることが,平成26年度の本研究成果により示唆された.実験に供した合金系は金属間化合物のNiMn(L10)相のMnをZnに置換したNiMn-NiZn擬2元系であり,NiMn相のTN(750℃)がZn濃度の増加に伴い急激に低下するため,TNを挟んで反強磁性に起因する自由エネルギーによりMnリッチの反強磁性相とZnリッチの常磁性相の2相に分離する結果が得られた.本年度は,種々のNiMn-NiZn擬2元系合金を作製し,L10規則構造と格子定数の測定,VSMおよびSQUIDによる磁気測定を行い,本合金系の反強磁性特性と,TNのZn濃度依存性を調査した.さらに,680℃および650℃におけるTN近傍の組成の合金を作製し,(強加工)熱処理を施し,反強磁性誘起相分離を調査した. H26年度と同様の手法でNiMn-NiZn擬2元系合金を作製し,上述した実験に供した. 磁気測定の結果,TNが300℃以下となるZn濃度が27at.%以上の合金において,Curie-Weiss則に従った反強磁性合金の典型的な1/χ-T曲線が確認できた.TNが300℃以上の合金では試料の昇温に伴いL10の規則度が低下するために,明瞭な1/χ-T曲線が得られなかったものと考えられる.(強加工)熱処理した合金において,相分離が確認できた.その平衡組成幅は,拡散対法により決定した2相組成の幅よりも小さい結果が得られた.相分離近傍の組成では,拡散を誘起する熱力学因子Φが小さくなるため,拡散係数Dも小さくなり,拡散対試料が平衡に達するために要する時間が大きくなることが予測される.従って,合金法により決定した相分離の組成がより平衡濃度に近いのもと考えられる.
|