研究課題/領域番号 |
25630262
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
井上 純哉 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (70312973)
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研究分担者 |
小島 真由美 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (80569799)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ラスマルテンサイト / 変形機構 / 加工硬化特性 / 固溶炭素 |
研究概要 |
現在高強度鋼の開発には、鋼中で最高強度を示すマルテンサイト相の利用が不可欠となっており、DP鋼やTRIP鋼などマルテンサイト相を含有する鋼が多数開発されている。しかし、これらの既往の高強度鋼では、マルテンサイト相自体の塑性変形能を利用する発想はなく、材料本来の力学特性を十分に利用しているとは言い切れない。そこで本研究では、マルテンサイト相自体が持つ塑性変形能の詳細を明らかにし、マルテンサイト相の塑性変形能を最大限に利用した次世代の高強度鋼の設計指針の構築に寄与することを目的とした。 本年度はマルテンサイト鋼とオーステナイト鋼を積層化した複層型鋼板(複層鋼板)を用いることで、マルテンサイト相に一様にひずみ10%から20%に渡る塑性変形を与えることを可能にし、塑性変形中の加工硬化特性を明らかにすることを目的とした。その結果、マルテンサイト相はひずみ20%まで単調に加工硬化する事を明らかにすると共に、マルテンサイト相の加工硬化特性は固溶炭素量の増加と共に大幅に上昇することを示した。さらに、ひずみ速度依存性に関する解析から、マルテンサイト相は固溶炭素に起因する動的ひずみ時効から負のひずみ速度依存性を示すひずみ速度領域があることを明らかにした。この負のひずみ速度依存性を示すひずみ速度は付加ひずみ量に大きく依存し、固溶炭素量の増加とともに変化量は小さくなることを示した。これらの結果と、透過電子顕微鏡を用いた転位組織の解析から、固溶炭素量の増加に伴い転位セル組織の形成速度が低下することが加工硬化特性の改善に寄与していることが示唆された。 以上の結果は、マルテンサイト相の塑性変形能を制御する上での固溶炭素量の重要性を示すもので、焼戻マルテンサイトを制御する上での重要な指針となると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の目的は、マルテンサイト相の加工硬化特性とそれに及ぼす因子の解明であり、その目的はほぼ達成されたと判断する。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、本年度まで成果を踏まえ、マルテンサイト相の加工硬化特性と局所的な変形挙動の関連を明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初予定より消耗品が低価格で購入できたため。 消耗品費として利用する。
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