研究実績の概要 |
低消費電力スピントロニクスデバイスに向けた新規反強磁性体として、従来用いられてきたMn基反強磁性合金とは異なり、資源リスクの少ないCr基反強磁性合金に注目して研究を行った。中でも、高い磁気モーメントと高いネール温度を有するCr-Al合金薄膜に注目し、X相規則構造を有するCr3Al合金薄膜の形成条件の解明と、X相Cr3Al相上に積層した金属磁性薄膜の交換磁気異方性に関する検討を行った。Cr-Al合金薄膜の組成をCr:Al = 3:1の条件で、種々の成長温度で成長させた結果、成長温度が400℃以下では、X相Cr3Alの単層膜が形成されること、500℃ではX相Cr3AlとCllb相が共存すること、600~700℃では、C11b相のCr3Al(正確には、Cr2(Cr, Al))が形成することを明らかにした。300℃で作製したX相Cr3Al薄膜に対して放射光を用いたX線回折測定を行った結果、X相は従来の報告とは異なりMgO基板上で単結晶成長が可能であること、長範囲規則度が約0.67であることが分かった。さらに、X相に特有の半導体的な電気抵抗の負の温度依存性が観測され、構造的な規則構造と共に反強磁性の磁気的な規則度も有することが確認された。また、作製したX相Cr3Al(001)層上でのbcc(001)ベースの垂直磁化膜として、Fe/MgO、FeCo/MgO、FeCo/Al、FeCo/AlOx薄膜を作製したが、いずれの場合も垂直磁気異方性を示さず、MgO層を製膜した場合には、強磁性層の磁化が消失することが分かった.
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