研究課題/領域番号 |
25630271
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
滝沢 博胤 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (90226960)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 固体電解質 / 高圧合成 / 共有結合性結晶 / リチウムイオン伝導体 / チャンネル構造 |
研究概要 |
固体結晶母格子中で高いLiイオン移動度を実現するためには、剛直な共有結合骨格からなる3次元チャンネル構造内の空隙に、可動性Liイオンを配置した固体構造の実現が理想である。電気陰性度差の小さなホウ素とイオウの組合せは、共有結合によってBS4四面体が多段連結した「macro-tetrahedron」クラスターを形成し、そのクラスター連結によって剛直構造の中にイオン伝導パスとなる3次元チャンネルを形成する。本研究では、BS4四面体が安定に生成する高圧力場を反応場として、Li-B-S系化合物を対象に、母格子空隙へのLi挿入によって剛直な3次元空洞内に可動性カチオンを配置した新しい材料創製を目的としている。 25年度は超高圧力下でのLi-B-S三元系化合物の合成実験を行い、Li2B2S5の組成をもつ新規相(高圧相)が圧力3~6 GPa、温度600~1000℃の条件下で生成することを見いだした。合成条件の詳細な検討結果から、新規相の生成には、高温・高圧下の液相生成領域からの徐冷操作が重要であることがわかった。 X線回折図形のリートベルト解析の結果、単斜晶系の骨格構造はBS4四面体の連結によって構成され、一次元のチャンネル内にLiイオンが配置していることがわかった。構造中にはS-Sダイマーが存在し、構造安定化に寄与していることが示された。 酸化物系骨格構造の探索実験も行い、マイクロ波選択加熱を利用することによって、トンネル型構造のLi-Sn-O系新規相の合成に成功し、結晶構造の解析を進めたところ、ラムスデライト骨格を有することが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画で予定したLi-B-S系新規共有結合性結晶の高圧合成に成功し、その合成条件ならびに結晶構造を明らかにすることができ、また、リチウムイオン伝導体の新規骨格構造としてLi-Sn-O系のトンネル構造形成を見いだすことができたため。なお、単相試料のリチウムイオン可動性評価が次年度の課題として残ったため、「おおむね順調に進展」と自己評価した。
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今後の研究の推進方策 |
26年度は、マクロテトラヘドラル化合物の結晶構造解析を進め、剛直な3次元空隙内におけるLiイオンの配列状態を明らかにするとともに、母相の物性と挿入Liイオンとの協奏作用による固体電解質機能の発現を狙う。 1). 前年度に合成した3次元チャンネルを有するLi-B-S系新規物質の結晶構造を解析し、macro-tetrahedron骨格からなるクラスターネットワークと挿入Liイオンの配列状態を調べる。これら構造解析には、既設のX線構造解析装置、各種分光学装置を用いる。 2). マイクロ波吸収特性評価からLiイオン可動性が示された試料について、Liイオン伝導度を評価し、マイクロ波吸収評価によるスクリーニング結果とマッピングする。 3). 種々のマクロテトラヘドラルクラスターネットワーク化合物について、Liイオンを空隙に挿入した新規物質を合成するとともに、その結晶化学的考察を中心課題とする。クラスター成分とLiイオンの割合を変化させ、価電子論的な要請によるネットワーク構造の変化を構造解析により明らかにする。 以上より、超高圧合成法による成分元素の直接反応、母格子への原子挿入反応を駆使して、Li-B-S系化合物を対象に、母格子空隙へのLi挿入によって剛直な3次元空洞内に可動性カチオンを配置した新しい電池材料機能設計の指針を与え、研究の総括とする。
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