研究課題
挑戦的萌芽研究
コヒーレント収束電子回折(Coherent convergentbeam electron diffraction: Coherent CBED)法は,異なる回折ディスク同士が重なる条件を作り,そこに現れる干渉縞を観察することで、電子波の位相変化を干渉縞のシフトとして検出する手法である.コヒーレントCBED法を用いて,異なる回折波・異なるドメイン間の干渉を利用して非周期構造であるドメイン境界の構造解析を行う手法の開発に取り組んだ.コヒーレントCBED法を六方晶マンガン酸イットリウム(YMnO3)の強誘電相の180°ドメイン壁に適用し,ドメイン壁における位相シフトの検出を行った.また,動力学回折理論に基づくコヒーレントCBED図形のシミュレーション法の開発を行った.位相シフト検出の精度を向上させるため,対物レンズの結像側の収差によって導入される,コヒーレントCBED図形の干渉縞の歪みを補正する方法を現在検討している.CBED法の種々の物質系への応用を行った.金属的な伝導を示すオスミウム酸リチウム (LiOsO3) の構造相転移における対称性変化をCBED法により調べ,室温相では中心対称性を持ち低温相では中心対称性を持たないことを明らかにして,この物質が金属で初めて強誘電的構造相転移を示す物質であることを示した.さらに,静電ポテンシャル分布解析を行い,イオンの変位による分極への寄与 (イオン分極) と電子密度分布の変化による分極への寄与 (電子分極) を評価した.また,窒化アルミニウム薄膜の極性判定をCBED法により行った.
2: おおむね順調に進展している
冷陰極型電界放出電子銃、照射系の球面収差補正装置およびオメガ型エネルギーフィルターを搭載した透過型電子顕微鏡JEOL-TKPを用いて,電子線の干渉性を格段に向上させてコヒーレントCBED法を行う手法を確立した.また,動力学回折理論に基づいてコヒーレントCBED図形のシミュレーションを行う方法を開発した.CBED法による静電ポテンシャル分布解析により,オスミウム酸リチウム強誘電相におけるイオン分極・電子分極の評価などの新たな成果が得られつつある.
対物レンズの結像側収差によるコヒーレントCBED図形の干渉縞の歪みの補正法を確立し,強誘電ドメイン境界の位相シフト分を抽出して,動力学回折理論によるシミュレーションと比較を行う.さらに,第一原理分子動力学計算により強誘電ドメイン境界のシミュレーションを行って,コヒーレントCBEDで得られた結果との比較を行う.
すべて 2013
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 1件)
Nature Materials
巻: 12 ページ: 1024-1027
10.1038/NMAT3754
Appl. Phys. Express
巻: 6 ページ: 091001-1-3
10.7567/APEX.6.091001