トライボルミネッセンスは応力発光の一種であり、機械的な外力 (摩擦)を受けて光を出す現象である。本研究では既往の応力発光材料に共通しているウルツ鉱型構造を有するAlN:MnとCaAlSiN3:Eu(以下:CASN)の2つに着目し窒化物セラミックスのトライボルミネッセンスについて検討した。トライボルミネッセンス測定は摩擦摩耗試験機に光電子増倍管を付設して行った。その結果、AlN:Mn、 CASN共に荷重増加に伴い発光強度が増加することがわかった。その摩耗面はAlN:Mnにおいて滑らかであったのに対して、CASNの表面は顕著な凹凸が生じていた。このような摩耗の挙動の差異が2つの材料におけるトライボルミネッセンスに影響を及ぼしたと考えられる。また、AlN:Mnは摩耗体積の増加と共に積算光電子数は線形的に増加した。これよりAlN:Mnの摩耗により発光が助長されることが分かった。しかし、両者の関係は、直線的ではあるもの切片が0でないことから摩耗体積0においても発光していることが示された。 これは非破壊的な変形においてもAlN:Mnは発光する事を意味しており、AlN:Mnの発光は摩耗だけでなく弾性変形によっても発光する事が明らかになった。一方CASNについては摩耗体積の減少と共に発光量も減少し摩耗が0においてはほぼ0となった。すなわち、CASNでは摩耗による破壊がトライボルミネッセンスを支配している事が分かった。焼成温度と焼成時間を変化させてAlN:Mnの試料を作製したところ、両者の増加に伴って粒成長している事が確認できた。焼成温度と焼成時間の増加に伴ってAlNのc軸が伸長、すなわち、AlN粒子が高純度化していることもわかった。焼成温度と焼成時間の増加に伴い発光強度は上昇した。これは粒成長に伴う粒内を高純度化と対応している。すなわち、AlN:Mnの発光強度は、AlN粒子内の酸素固溶量の減少により増加することが示唆された。
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